■湯島サロン「国際社会探究講座〜ロシア・ウクライナ関係を読み解く〜」報告
今回のサロンは、ちょっと違ったスタイルのサロンでした。
企画はnikoさんたちの湯島平和サロンで、主催は立初創成大学設立準備財団。場の提供がCWSコモンズ村でした。でもまあ、実際にはいつものようなサロンでしたが。
ただ参加者は20人を超えての大盛況でした。
報告は、主催者であり話題提供者の樋口祥子さんが書いてくれました。それに、場の提供しかしていない参加者の私の感想も加えて、報告にさせてもらいます。
まずは樋口さんからの報告。
今回ご縁をいただき、国際社会探究講座「ロシア・ウクライナ関係を読み解く」を実施させていただきました。
たくさん集まっていただけると嬉しいな、と思って当日サロンへ足を運ぶと、なんと20名以上の方がお越しくださり、椅子が足りず立ち見まで。予定を超え3時間以上に及ぶ大変充実したひと時となり、日頃よりサロンに集い議論を交わされる皆様の熱気を感じるひとときとなりました。
近くて遠い、日本人が意外と知らないロシア。
なぜウクライナ侵攻が起きたのか?現地の人はどう考え生きているのか?ロシア・ウクライナ関係を通して見える、国際社会のリアルな姿
は?
今回の目的はこれらを、なるべくファクトの積み上げから読み解くことです。
初めに、そもそもご参加の皆さんが「ロシア」に対してどのようなイメージを持っているのか。ポストイットに書いていただきました。
出てきたキーワードは、「民族音楽」「ロシア文学」「文豪トルストイ」「バレエ」。それから、「広い凍土」「不毛地帯(シベリア抑留)」「広大」「遠い国」。さらに、「エカテリーナ女帝」「プーチン帝国」「スターリン」「KGB」「多民族国家」「あまり自由がない国」・・・。
その後は、ミニクイズを通して、①ロシアとウクライナの関係、②ロシアとそのリーダー、③なぜこの2国が衝突するのか、④関係するのはロシアとウクライナだけか、というトピックを一つ一つ読み解いていきました。
クイズの途中で、最初に書いていただいたポストイットを時々振り返りました。すると、なかには興味深いことに、出されたクイズに対して、付箋に書いたことと真逆の解答をする方が出てきました。例えば付箋で「自由がない国」と書いていた方が、「ロシアの人は情報に自由にアクセスできる」、「プーチン帝国」と書いていた方が「ロシアのリーダーは私利私欲で好き勝手やっているわけではない」と解答しはじめる、といった具合に。
流れてくる情報をそのまま呑み込むことから一歩踏み出す。「それってほんまなん?」と問うて、自ら情報を取りにいく。そのことの重要性を感じる一幕でした。
後半のディスカッションは大変頭を使うものでした。特に大きな議論になったテーマは「国とは一体何なのか?」。大変本質的なテーマです。
参加者の中からは、「本来は国というものなんてなくても良いはず」「国という形があった方が都合の良い人たちがいるのでは」「争いの火種を作っている元凶」「国という形ではなく、世界中で個人と個人とがつながり、互いに助け合う関係を作ることが望ましい」という興味深い数々の意見が出されました。
また、実際にロシアやウクライナを訪れたことのある方から、現地の人とのエピソードがいくつか紹介されました。
私たちはつい「この国がこう言っている」「あの国がこうした」と国単位で話しがちですが、ひとくちに国と言っても、「政府」と「国民」は全く考えも違います。それ以外にも、企業や同盟やさまざまなアクターが絡み合っています。ロシア・ウクライナ関係も、他の国際問題も、そのように主体別に切り分けて捉えていく必要があるということをあの場で再認識できたのは、大事なことであったかと思います。
自身はこれまで、ロシア駐在を含むいくつかの海外経験を経て「国際社会のリアルってこうなの?!」と驚くことや、外国の姿を鏡にして自分の国を振り返る機会をいただいてきました。そのエッセンスを、少しでも共有することができたならば、そして「それってほんまなん?」と問い、探究することの楽しさを体感いただくことができたならば、とても嬉しく思います。
最後に、今回はたくさんの方と実際にお会いしてお話をさせていただき、とても楽しく、元気をいただいたひとときとなりました。今回のテーマにもつながりますが、人と人とがこうやって実際に集い、共に時間を過ごし、そのご縁と絆の網目を作っていくと、それが危機の時に不安や困難を受け止める温かいネットになるのではないかなと思います。素敵な皆様と出逢わせていただいたご縁に感謝をいたします。貴重な機会を頂戴し、ありがとうございました。
以上が主催者の樋口さんからの報告です。
以下はサロンの場を提供させてもらった私の感想。
よく、人は「見たいものしか見ていない」と言われます。同じものを見ていても、人によって受け取り方は違います。しかも、直接的な接点が少ないものは、世間に伝わっている情報によって捉えがちです。ということは、もしかしたら、私たちは、マスコミによって与えられる「見せたいもの」しか見ていないのかもしれません。与えられた情報で世界を見ている危険性。樋口さんの問いかけは、そのことを気づかせてくれるものでした。ちなみにネットによる情報探しもまた、「見たいもの」になりがちです
しかも、言葉によって世界は構成されてしまいます。
たとえば、ロシアという言葉には多様な意味がある。同じロシアでも、ロシア政府とロシア国民では大きく違うでしょう。政府はウクライナ戦争をしているとしても、ロシア人がウクライナ戦争をしたいと思っているわけではない。それに日本人がそうであるように、人によって考え方は大きく違います。ひとくくりで「ロシア」といってしまうことなどできるはずもない。でも私たちは言葉によってしか話し合えず、しかもその「言葉」に自らの思考さえも影響を受けます。そこにも大きな落とし穴がある。
与えられた情報や既存の言葉ではなく、できるだけ現場に近い事実や自分の言葉で世界を見ていくことが大切ですが、それが難しい。
今回は、樋口さんの友人のロシア人のジーマさんが参加してくれました。
ジーマさんは、今回のサロンでもみんなの話し合いをどう感じていたでしょうか。
最後に一言話してもらいましたが、その最後に、みなさん、日本という国が好きですか、という問いかけがありました。
私は好きなのですぐ手を上げましたが、意外と少なかったのが驚きでした。
どこかでみんな「愛国心」という言葉をイメージしてしまうのかもしれません。
愛国心を求められて戦争に動員された歴史もありますが、私は本当の意味で自分の国を愛していたら、戦いには行かないと思っています。
愛している国に、戦争など起こしてほしくないからです。
愛している家族や友人に犯罪を犯してほしい人はいないでしょう。
そんなテーマのサロンを改めてやろうと思います。
ちなみに樋口さんのロシアでの生活体験を話してもらうサロンができたらいいなと思いました。ジーマさんにも参加してもらって。
お願いしてみようと思います。
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