■第1回脱ひきこもりサロン「ひきこもり当事者視点でいまの社会を考える」報告
今年から「脱ひきこもりサロン」を定期的に開催することにしました。
その第1回に当たる今回は、湯島のサロンにもよく参加している、「ひきこもり当事者」のSさんとHさんに体験と心情を話してもらいました。
参加者も、いろんな意味で、「ひきこもり」に誠実に取り組んでいる人が多かったので、示唆に富む話し合いが展開したと思います。私もたくさんの気づきをもらいました。
第1回目ということで、最初に私から「脱ひきこもりサロン」の企画主旨のようなものを少し話させてもらいました。
これまでのサロンの報告でもいつも書いていますが、私は、一般に言われている意味での「ひきこもり当事者」に関して否定的な考えを全くもっていません。むしろ、「ひきこもり」が進んでいるのは社会のほうで、多くの人が与えられた環境の常識や価値観にからめとられて、「ひきこもらされている」のではないか、と思っています。
しっかりした自分の価値観や主体性をもっている人たちは、そうした社会(学校や会社と言ってもいいでしょうか)に抗って、結果的に「ひきこもり」現象を起こしている。むしろ、ひきこもり(不登校もそうですが)とされている人たちは、そうした現在の社会のあり方に、異議申し立てをし、社会の問題を可視化してくれているのではないか。そんな気がしているのです。
そう考えると、いまの「ひきこもり現象」への対処の仕方は、全くおかしい。改めるべきは、ひきこもり当事者ではなくて、その周辺にいる人たちなのではないか。社会の目も含めて。
この数年、「ひきこもり」当事者と自称している人たちと交流していて、そういう人たちのしっかりした主体性や社会への強い関心や意欲を感じますが、どうも世間的には逆にとられている気がしてなりません。そこで、このサロンでは、「ひきこもり」ということを改めて考え直していけないかと思っているのです。
そのために、いわゆる「ひきこもり現象」で悩んでいる人を中心にして、毎月1回程度、自らをさらけだして気楽に話し合える場をつくっていきたい。
そんなことを話させてもらいました。
そのあと、サロンに入り、SさんとHさんに話してもらいました。引き出し役は、SさんとHさんとも時々話し合っているというサロンの常連の近藤和央さんです。
Sさんは自らの体験と思いを感情込めて挑発的に話してくれ、Hさんは同じく自らの体験と思いを冷静に論理的に語ってくれました。その組み合わせで、たぶん参加者それぞれいろんな気づきをもらったはずです。
「ひきこもり」と言われる当事者の人が持っている情念や怒りの大きさに圧倒された人もいたかもしれませんし、「ひきこもり」の「常識に逃げ込んでいる自分のひきこもり思考に気づいた人もいたかもしれません。
近藤さんは、客観的な視点からそうしたことを整理してくれました。
途中からは、参加者も話し合いに参加し、自らの体験や思いを話す人もいて、話題も広がっていきましたが、ここでの話し合の内容は文字にすると正確には伝わらないでしょうし、基本的には湯島のサロンでの個人的な発言はオフレコですので、紹介は差し控えます。
SさんやHさんの社会や専門家に対する指摘は辛らつですが(私にも辛らつです)、今回の参加者の多くは、共感を持って受け入れたような気がします。SさんやHさんに、社会への働きかけを期待する声もありました。
まだ1回目ですので、異論を真剣にぶつけ合うほどの話し合いには至りませんでしたが、それでも様々な論点が出てきたように思います。
Sさん、Hさんはもちろん、自らをさらけだしてくださった参加者のみなさんにも感謝します。
こんな感じで、ゆっくりとみんなの引きこもりがちな思考を開いていって、ますます進行しそうな「ひきこもり社会化」への流れに棹(さお)させればと思っています。
第2回目は、今回の2人の「当事者」に刺激を受けた「当事者の親」の立場から、Yさんが話題提供してもいいと申し出てきてくれました。とてもうれしい申し出です。
今回とは逆な立場での生々しい体験と思いが吐露されると思います。
開催日は2月23日を予定していますが、また改めてご案内させてもらいます。
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