■「お金は世界のあらゆる悪行の父」
話題になっているデヴィッド・グレーバーとデヴィッド・ウェングロウの共著「万物の黎明」を読んでいます。
頭脳の構造が違うのか文化が違いすぎるのかわかりませんが、欧米人の書いた本は私はなかなか理解しにくいのですが、本書もなかなかすっきりと頭に入ってきません。もう少しストレートに書いてほしいですが、いかにもソフィストケートされていて、あまりに多義的な表現が多すぎます。
でも感動する文章もある。
たとえば、ネイティヴアメリカン、つまりアメリカ大陸先住民のイロコイ族のカンディアロンクが欧米人に向けて言った言葉です。フランスの貴族が記録してくれています。
ちょっと長いですが、引用しますので、ぜひ読んでください。
当時(1700年前後)、世界を席巻しつつあったヨーロッパ文化への批判です。
「私は6年間、ヨーロッパ社会のありさまを考察してきましたが、彼らの行いが非人間的ではないとは、いまだいささかも思えません。あなた方が「わたしのもの」と「あなたのもの」との区別に固執するかぎり、それに変わるところはない。そう心から考えています。あなたがたがお金と呼ぶものは、悪魔のなかの悪魔、フランス人の暴君、諸悪の根源、魂の悩みの種、生者の処刑場である、こうわたしは断言します。お金の国に住みながら魂を生き長らえさせることができる、このような考えは、湖の底で命を長らえさせることができるという考えとかわるところがありません。お金は、贅沢、淫乱、陰謀、策略、嘘、裏切り、不誠実の父であり、世界のあらゆる悪行の父なのです。父は子を売り、夫は妻を売り、妻は夫を裏切り、兄弟は殺し合い、友人は偽り合う。すべてはお金のためです」。
アメリカ先住民の文化は徹底的に壊されてしまい、多くの日本人の頭の中には残虐なインディアン・イメージが大きいと思いますが、そうし思い違いを、この本は気づかせてくれます。
マーシャル・サーリンズの「石器時代の経済学」に出合った時と同じ感動をもらっています。
ちなみに本書の副題は、「人類史を根本からくつがえす」とあります。
この種のビッグ・ヒストリーの本は、ハラリやジャッジ・ダイアモンドなど、最近はやりですが、私にはみんな退屈でした。でもこの本は面白そうです。冗長で読みにくいのが難ですが。
問題はともかく厚くて、重いことです。1週間では読めそうもありません。
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