30代を中心とするメンバー12名で取り組んでいる大学づくりの活動を、大学設立準備財団代表の樋口祥子さんに紹介してもらいました。
降雪予報が出たため開催が危ぶまれたのですが、新しい「学びの場」づくりに取り組んでいる人やいまの教育のあり様に関心のある人など10人を超える人が集まりました。
この問題への関心の高さがわかります。
12人が目指しているのは、「立初(たてぞめ)創成大学」の設立です。
その実現に向けて、大学生も含めて、30代の若者たちが中心になって、構想を練り上げ、資金を出し合って立ち上げたのが、立初創成大学設立準備財団です。出資者や具体的な立地があったわけではなく、資金集めも立地探しも、すべて自分たちで取り組むという若者たちの意気込みに、その本気度(使命感)を感じます。その代表の樋口さんは、勤務していた会社を退社し、いまその活動に専念しています。
樋口さんは、なぜこうした活動に取り組みだしたのかから話をはじめ、自分たちが目指している大学の構想や実現に向けての取り組みについて、紹介してくれました。
先行実践を踏まえて構想が完成したのは3年前の2021年。そこからその大学で構想している「教育の3本柱(国際情報分析・国際社会探求・フィールドワーク)」の実践に取り組みながら、立地探しを進めてきています。現在すでに立地もめどがつき、現地との交渉に入っているとのことです。
どこまで書いていいかわからないので、この程度にしますが、詳しくお知りになりたい方は、財団のホームページやフェイスブックをご覧ください。
https://tatezome-sosei-univ.studio.site
https://www.facebook.com/tatezomesoseiuniv
そもそもの出発点は、現在の大学教育への疑問と日本社会の未来への不安のようです。
樋口さんは、卒業後、会社に入社し、その関係で5年ほど海外で生活されたそうですが、そこでいろいろな気づきを得たようです。それが今の大学教育への疑問を引き起こしたのかもしれません。今の大学教育は、現実をしっかりと見る目を養い、社会に合わせるだけではなく、社会の一員として、いかに生きるべきかを自ら問えるような教育になっているのか、というのです。
同時に、いまの社会や経済に直接触れて、「このような日本で、私たちやこれからの世代は幸せになれるだろうか」という思いを持ったそうです。
そこで、仲間たちと一緒に、「自分たちで、この地域から、この国を良くしていくんだ」という心意気と責任を持ち合わせ、この国の「主人公」を生み出す大学をつくろうと動き出したのです。
ここにいくつか重要な視点があります。
たとえば、学ぶものたちを主役にしようという精神を感じます。
学ばせる大学ではなく、学ぶ大学と言ってもいいかもしれません。
受け身の学びではなく、自らが徹底的に真実に迫る「探求」と、実際に地域で生きる人たちの生きざまや歴史を経て育てられてきた本物の文化と触れる「体感」を核にした、自らが学ぶ場を創っていこうとしているのです。
樋口さんたちは、いまある地域に新しい大学を創ろうとしていますが、その大学づくり活動や大学そのものが、モデルになって、全国各地で同じような大学づくりが動きだし、拡がっていくことを目指しているようです。
という意味では、これは単に一つの大学を創ることではなく、大学という制度そのものを変革していこうという活動なのです。
つまりある種の「運動」を起こそうとしているのです。
そうした「運動性」を感じさせる工夫もいろいろと示唆されていました。中途半端な紹介は誤解を招きかねないので控えますが、ぜひ多くの人に樋口さんたちの構想と思いに触れてほしいと思いました。
単なる大学づくりの話ではないのです。
公的な大学制度に基づく大学(私立も含めて)を創るには文科省のルールに従わなければならず動きにくいし、資金調達方法によっては出資者の影響を受けやすい危険性もありますが、樋口さんたちがあえて大学に挑戦しているのは、制度そのもののパラダイム転換を志向しているからでしょうか。もちろん樋口さんたちは、そうしたことがないように、資金調達方法にしてもいろいろと考えています。
話し合いでは、この大学の理念や哲学の話題も出ましたが、樋口さんたちが基本に置いているのは、歴史的遺産としての「日本文化」です。
その文化は、いまなお日本各地のコミュニティに残っている。しかし、そうした一次産業を核にした地域コミュニティは失われつつある。その結果、「日本人」というアイデンティティも壊れてきているのではないかというのです。
その理念は、大学の名称に「立初」という文字を入れたところにも現われています。
建物の位置が定まったとき最初に建てられる柱を「立初柱(たちぞめばしら)」というのだそうです。ホームページによれば、「転じて、一国一家を中心で支える人物」とあり、この大学の使命は、この国の「主人公」を生み出すことと書かれています。卒業後は、国や地域を支える「立初柱」になる人を育てるというのです。
同時に、「主人公」はしっかりと、地に足がついていなければいけない。したがって、この構想では、「地域とのつながり」がとても重視されています。カリキュラムのフィールドワークは地域にこだわっていますし、さらに「地域インターンシップ」で学んだ成果をまずは地域コミュニティに還元していくことになっています。キャンパスも実社会から乖離されることなく、むしろ地域コミュニティこそを「学び舎」にしていくことが重視されています。
まだまだいろんな話が出ましたが、長くなるのでこのくらいで止めておきます。
私は、共感しながらも、いくつかの疑問も感じましたが、どんな質問をしても即座に適切な回答が返ってくる。12人を中心に、時間をかけて構想し、しかも実践を重ねながら構想を見直している様子を感じました。
たとえば、私は「人を育てる」という表現に「学ばせる」発想を感じたのですが、教授と学生との関係もしっかりと考えられているようですし、大学生をどうカリキュラムづくりに巻き込むのかということもすでに試行済みなのでしょう。
むしろ話を聞いている私のほうの頭の固さを思い知らされました。
ただそうは言っても、現在の社会での実戦力にむけての「急ぎすぎ」の感を持ちました。
リベラルアーツへの時間ももっとあってほしいとも思いましたが、そもそも4年間という時間が短すぎる気もします。そこから変えていかないと大学教育は変わらないような気もします。ちなみに、樋口さんたちは大学院も想定しているそうです。
でも中途半端な異論は誤解を招きそうなので止めておきましょう。
ともかく、この活動が大きな風を起こしていくことを期待したいです。
活動を推進していく上で、賛同者が多いことは大きな力になるそうです。
賛同者の署名活動もしていますので、よろしくお願いします。
https://tatezome-sosei-univ.studio.site/sign
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