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2024/02/04

■第29回益田サロン「生物と環境に関わる2つの問い」報告

今回の益田サロンは私が参加出来なかったので、参加者の近藤が報告をまとめてくれました。

5人が参加し、少人数ならではの活発な質疑応答が展開しました。

前回の益田サロンでの乾さんの宿題質問から話はスタートしましたが、その問題を明確化するために、今回は(前回まで議論進展の中核にあった同心円~二重円錐モデルは一旦横に置いて)益田サロンの一つの基本概念である「生物と環境の関係性」について最初から復習することとなりました。

生物とその生存を支える環境、逆にいえば、その生物が破壊すると自らの生存を棄損する生存基盤としての環境、という不即不離の関係性を見ていく中で、最後にはその相似形としての「人間と社会の関わり」という比喩にまで話が広がりました。
もっとも、「人間(個人)と社会」の関係性については、今回は軽く示唆しただけで、次回のテーマとして持ち越すことになりました。

本日の発端となった乾さんの質問要旨は、
①環境と生物の関係を、たとえば絶滅危惧種についてどう考えるか。
②同様の視点から、ロシアの攻撃によってインフラが破壊されウクライナでコレラが発生し流行の危機となった現象をどう考えるか。
という二点でした。
益田さんはそれらの背後にある「生物と環境の関係性」について説明してくれたので、これが結果的にここ数回にわたる益田サロンの復習になったわけです。

益田さんはジフテリアやコレラなどの病原性細菌を例にとって詳しく説明してくれました。
いわゆる病原性細菌は、本来の姿では大きな悪さをせずに人体の中で常在的に共存しています。細菌にとって人体は長く生活できる安定的な生存環境です。

ところが、細菌にバクテリオファージ(ウイルス)が感染すると、細菌の内部にウイルスの遺伝子が入り込み、細菌の増殖システムを利用してウイルス自身を増殖させます。
そして、ウイルス遺伝子に含まれている毒性たんぱく質を作るDNAが人体にとって致命的な毒素を作ります。
つまり、ファージ感染された細菌だけが病原性を発現するわけです。

(このとき、穏やか形temporateタイプは、細菌のDNAの中にウイルスのDNAを挿入し、細菌の分裂増殖のときにウイルスDNAも一緒に増えます。激しい形virulent形は、細菌のDNAとは独立に細菌のなかに存在し細菌の複製機能を使って大量に自己複製し、細菌の細胞膜を破壊してウイルスが激しく撒き散らされます)
感染していない細菌は(名前こそ病原性細菌と呼ばれますが)病原性をもたず環境(人体)と調和・共存しています。

ファージは、自分が感染することによって感染先の細菌が非感染細菌に対して生存不利になる(ウイルスを抱えて生きるために負担が増える)ことを補償するために、ファージの遺伝子の中にある毒たんぱく質(細菌に対してではなく人体に対して毒)合成DNAを使って細菌に毒を作らせます。この毒が細菌から排出されて人体の血管を壊して出血させ、細菌に栄養を与えることで、自分(ファージ)の生存を担保します。

ここで、「ファージと細菌」、「細菌と人体」、というふうになっている「主体と環境」の関係を見ると、主体は直接の環境には大きな悪さはしません(環境が持つ復元力を超える負担はかけない。これを益田用語で「環境あっての生物」というわけです)
しかし、もう一段階先にとっては害となるわけです。

このような、多重入れ子となっている主体と環境/その環境/さらにその環境、という構造のあり方は、実はかなり普遍的な事物のありようなのではないか、と益田さんはいいます。そして、政治家個人と派閥と政党と社会と国と世界という入れ子構造にもそうした利害と協調の多重構造があるのではないか、と話はジャンプするのでした。

が、ここからの「公と私」の関係性などへの視点展開は、先に述べたように次回以降のお楽しみとなりました。

なお、今回新たに乾さんから出された関連質問に「抗生物質耐性菌はなぜ素早く耐性を獲得するのか(環境への素早い適応)」というものがありました。
突然変異や遺伝子組み変わりという変化メカニズムだけでは現実にみられるような素早い耐性獲得は説明できないのではないか、という趣旨です。

これに対しては益田さんから「他の細菌種がすでに獲得していた耐性DNA(ウイルスなどが運ぶことで)水平獲得したのではないか」との回答がありました。これも生物の環境適応戦略の別の姿ではないか、というわけです。

生物と環境の関係や、そこからの比喩を考えることは、私たちが物事をみるときの新しい視点を提供してくれるのではないか、という結論で今回のサロンは終了しました。

Masuda000

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