■取り返しのつかないミス
人は時々、取り返しのつかないミスをしてしまう。
しかし、大体において、そのことには気づかないことが多いのだが、今回は不幸なことに気づいてしまった。
もう2時間前のことなのに、いまも悔やんでも組み切れずにいる。
陽子線治療で4日前から待合室で少しずつ会話を交わしはじめた「10時の人」がいる。
その人は今日が治療の最後の日。
それで、今日が最後ですね、と声をかけたら、そうです、でも21日がんばったけれどがんが治ったのかどうはわからないし、終了時の診察もない。どうもけじめがつけられないというのです。
そこで私は呼ばれてしまったので、話はそれで終わっていまいました。
私の治療の後は、入れ違いにすぐ「10時の人」が治療室に入りますが、わざわざ私に、「どうぞお大事にしてください」と言ってくれたのです。
それが、涙が出そうになるほど、うれしかったのです。
いつもスマホやノートを出して何かやっていたので、最初は話しかけにくい人でしたし、娘からは話しかけたら迷惑だよと注意されていたのですが、迷惑ではなかったのです。たぶん。
私は、しかしいつのようにそのまま会計をして、今日は湯島に来る予定だったので、病院からのバスに乗ってしまいました。
そしてハッと気づきました。
「10時の人」の治療が終わるのを待って、21回完了のお祝いに、待合室隣のドトールでコーヒーをご馳走すればよかったと気づいたのです。そうしたら連絡先も交換できたかもしれません。少なくとも、彼にとっては一つの区切りができたはずです。
癌体験を楽しんでいる私と違い、「10時の人」はいろいろと口に出したいことが多いことは、なんとなくこの数日の会話で気づいていました。それを聞くだけでも、「10時の人」は喜んでくれたでしょう。「10時の人」の笑い顔にも出合えたかもしれない。そして私は友人がつくれたかもしれない。
悔やんでも悔やみきれないミスをしてしまいました。
実は昨夜、私はちょっと体調に異変があり、よく眠れませんでした。
今朝はほぼ回復したのですが、そんなこともあって、私自身の余裕がなかったのです。
今週はいささか用事を入れすぎてしまったのかもしれません。
治療中である認識が欠けています。困ったものですが。
「10時の人」と会うことはもうないでしょう。
そう思うと涙が出そうになるほど、さびしいです。
なぜでしょうか。
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