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2024/03/05

■湯島サロン「複音ハーモニカ音楽の不思議」報告

今回の話題提供者は福岡在住のハーモニカ奏者 西川義夫さんです。

西川さんは60歳からハーモニカ人生を始め、いまはプロ奏者として世界を舞台に活躍していますが、そうした中で、ハーモニカの演奏の持つ不思議な力に気づき、その解明に取り組みだしています。

今回のサロンでは、西川さんは、ドラマチックな人生物語の一部とハーモニカの話、そしてハーモニカの不思議な力について、映像とハーモニカ演奏を交えながら3部構成で話してくれました。

最初に紹介されたのが映画「ビルマの竪琴」の主人公、水島上等兵の写真でした。
映画の中で、水島上等兵は「埴生の宿」を竪琴で弾くのですが、その「埴生の宿」が西川さんの人生を決めたそうです。そこから、大学生時代に家出して九州での三池争議に参加し……と波乱万丈の西川さんの人生が始まるのですが、思い切り省略すれば、55歳の時に難病に襲われ、その治療のために、これまたドラマチックな経緯を経て、中国の山奥で4か月、治療することになったのです。

その時にハーモニカを持参し、治療中、自らの心を癒すために宿所で独りハーモニカを吹いていたそうですが、ある時、宿所のまわりに大勢の人たちが集まって聴きいっているのに気づいたのです。そこで、自分のために吹いていたハーモニカが、「人が聴いてくれる楽器」なのだと気づき、帰国後、プロのハーモニカ奏者になろうと決意したのです。

帰国後はストリートライブもやりながら、独学で練習を重ね、世界大会では2位入賞し、音楽教室の先生を頼まれたり、自らも教室を開いたりするようになったのです。
ストリートライブはすでに1000回を超えていますが、国内のみならず、ハーモニカ演奏で世界各地も回っています。

ハーモニカも今回10本以上も持参してくれて、音の違いを聞かせてくれたりしながら、いろいろと説明してくれました。ハーモニカという楽器の特性に関してもいろいろと解説してくれました。純芸術と大衆芸術との世界に二極化しているハーモニカの世界に関しても現状を少し話してくれました。西川さんは一匹狼的に活動しているようですが。
ストリートライブの様子も映像で見せてくれましたが、子どもたちが本当に楽しそうです。自然と歌い出し動き出す。そして仲間意識が生まれてくるようです。
話題に合わせて、埴生の宿や夜来香など、西川さん自身がアレンジしたメドレーも含めて、話の合間に数曲演奏もしてくださいました。

ところで今回のテーマの「ハーモニカ音楽の不思議」は、そうした話の中で、西川さんが出合ったことなのです。
たとえば、ポーランドで「夕焼け小焼け」をハーモニカで演奏した時に、聴いている人たちが涙を流したそうです。あるいは、アルゼンチンの野外音楽の聖地で演奏していた現地のグループにハーモニカ演奏での参加を申し出た時、最初は乗り気でなかった奏者が合奏しだしたら共感し、最後は抱き合うほどに心がつながった体験(映像で紹介してくれました)、さらには西川さんのお父さんが入院しもう意識を失っていたのに、耳元で小さくハーモニカで「埴生の宿」を演奏したら、目から涙が流れた感激。そういえば、中国の山奥の村で村人たちが、ハーモニカの音に魅かれて集まり聴きいっていたのも、不思議といえば不思議です。

こうしたことを体験しているうちに、西川さんはハーモニカの音が持っている不思議な力への関心を深めたのです。
ハーモニカには、なにか心を開き、心をつなげる不思議な力がある。もしかしたら世界を変える力が、ハーモニカにはあるのではないか。その理由を明らかにし、ハーモニカ演奏を世界に役立てたい。
しかし、日本の音響学者や情報学者は働きかけてもなかなか関心を持ってくれなかったようです。としたら、自分でやるしかない。このあたりが、いかにも西川さんらしい。

そこからハイパーソニック効果の話へと移りました。
人間の耳で聞こえる音は、20ヘルツから20キロヘルツまでの音域だそうですが、ピアノなどの楽器と違い、ハーモニカはそれを超えた高周波を出しているのだそうです。
ジャワ島の民俗音楽ガムランは、演奏者がトランス状況になるばかりか、演奏会場では全員がトランス状態になることで有名ですが、西川さんはガムランの話もしてくれました。さらに話は広がっていきました。

長くなってしまったのと、私の理解能力不足で冗長になりそうなので、報告はこの辺りでやめますが、ほかにもいろいろと興味深い話がありました。

サロンには、自らハーモニカの演奏活動をしている人やいろんな楽器を演奏している人など、音楽やハーモニカに造詣の深い人も参加していましたので、話し合いも盛り上がりました。かなり専門的な話も出ましたが、なんとなくハーモニカのすごさが私にも伝わってくるサロンでした。
参加者のハーモニカ演奏もありました。

私が子どもの頃は学校でもハーモニカは習った記憶がありますが、最近はないようです。
なぜそうなったのか。これに関してもいろいろと話題が出ましたが、いろいろと考えさせられることが多い話でした。
ハーモニカの位置づけの変化は、社会の変化の象徴と言えるかもしれません。経済のあり方や教育のあり方、芸術のあり方、あるいは生活のあり方を見事に象徴しているような気がします。 
逆に言えば、西川さんが言うように、もしかしたらハーモニカには世界の歴史を変える力がある。西川さんは、この問題をしっかりと世に問うために、まずは放送大学に入学し、論文をまとめて発表することにしたそうです。

ハーモニカは、1827年にドイツで製作されだしことから、1827がハーモニカ元年とされているそうですが、3年後の2027年はハーモニカがつくられだしてから200年目です。ハーモニカ3世紀に向けて、西川さんの論文が、ハーモニカの歴史を変えていくきっかけになるかもしれません。

西川さんのおかげで、音楽の力を改めて実感しました。子どもたちがどんな音楽環境で育つのかが世界を決めていくような気がしてきました。
音楽関係のサロンをまた開きたいです。どなたかぜひサロンを企画してください。

西川さんの活動は次のサイトをご覧ください。
西川さんの演奏も聴けるはずです。
https://www.youtube.com/channel/UCuP2fisX825tb1ZfzDCMwIw

 

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