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2024/05/08

■第1回ブックサロン報告

お薦めの本を紹介し合い話し合うブックサロンが始まりました。
1回目は、3人の方に本を紹介していただき、話し合いました。
20代から80代の9人が参加、女性が少なかったのが残念です。

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今回、本の紹介をしてくださったのは、鈴木章弘さん、河端伸裕さん、川端修平さんの3人です。

鈴木さんは、「人生の林住期をよく生きるための参考書」として、3冊の本を紹介してくれました。その3冊とは、『第三の人生』(アルフォンス・デーケン)、『50歳からちょっと心を休ませる本』(加藤諦三)、『人生後半の戦略書』(アーサー・C・ブルックス)。「林住期」とは、人の一生を4つに分ける古代インドの考え方で、人生3番目に当たるおおむね50歳から75歳。職業や家庭から自由になって、自分らしく生きることのできる時期です。まさに鈴木さんは、いまその時期を生きています。
この3冊からは、残された人生最後の5年、10年、20年(?)をどう生きるか、を考えるうえで、教えられることが多いと言います。
それぞれの本から鈴木さんが共感したメッセージを2つずつ書きだしてみんなに配布してくれました。それを読むと、鈴木さんの関心は、ハウツー的なことではなく、「自己の本質」への問いかけといったようなことのようです。林住期は「自己」を見つけて、次の「遊行期」もしくは「彼岸」へと向かう時期のようです。

河端さんが選んだのは『世にも奇妙な人体実験の歴史』(トレヴァー・ノートン)。科学者たちの自分を犠牲にした驚愕する人体実験のエピソードがユーモアたっぷりに描かれていてとても面白いそうです。
その一部を少しだけ紹介してくれました。また、本の内容を紙芝居的にまとめてきてくれて、それを使いながら、ざっくり西洋医学史や医療のリスクとメリットのバランスなどの話をしてくれました。さらに、いささか刺激が強いですが、と言いながら、『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』(ウェンディ・ムーア)も紹介してくれました。
「人体実験」というとおどろおどろしいイメージがしますが、今の私たちの暮らしは、こうした自らの身体を使って行われた「生命」をかけた先人の奇妙で数奇な行動の上に成り立っているのです。と同時に、人は頭で生きているのではなく、心身で生きていることを改めて思い出させてくれるような気がします。多くの先人たちが犠牲にした「生命」を知ったら、決して生命はおろそかにはできないはずです。

20代の若い川端さんが紹介したのが、『意味がない無意味』(千葉雅也)です。これは私も読んでいますが、難解で消化できませんでした。川端さんがそれをどう紹介するのか興味深かったのですが、川端さんは私と違って「過剰な無意味な意味」から自由になって、同書のメッセージを受け止めているようです。意味に縛られて何もできない大人たちを尻目に思考を身体行動へと転換して生きている若い世代の読み方はやはり違います。世代によって読み方が違うのです。頭ではなく体で読んでいる。そういえば、私も若いころは、そうやって本と付き合っていたことを思い出しました。
川端さんはそこから、身体論へと視野を広げ、何冊かの本を紹介してくれました。『ありのままがあるところ』(福森伸)、「TOKYO0円ハウス」(坂口恭平)、『親指が行方不明』(尹雄大)、『やわらかな言葉と体のレッスン』(尹雄大)、さらには、『句点。に気をつけろ』(尹雄大)、『独立国家のつくりかた』(坂口恭平)『現実脱出論』(坂口恭平)、『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』(森川すいめい)です。
1冊の本が、どれほど世界を広げるかも改めて感じました。

3人が紹介した本をそれぞれ話題に話し合った後、最後に参加者からも本の紹介をしてもらいました。
今回は哲学に取り組んでいる人がおふたり、参加されていましたが、おひとりから「虚構」をテーマに3冊の本が、もうひとりの20代の若い人からはレヴィナスの本の紹介がありました。林住期の鈴木さんと同じように、読書とは、それぞれの人生の段階に応じた、「よく生きるための気づき」探しなのかもしれません。

私のように、すでに林住期を超えて遊行期?になってしまっても、さまざまな段階を生きている人たちの「読んだ本の話」はとても興味深く、気づかされることも多かったです。どうも本は読むだけのものではなさそうです。

サロンに参加したおひとりから、翌日、こんなメールが届きました。

『本』というものを介在させることで、いまでも、人が語り出す豊富な機会があるのがわかったことは良いことでした。

読書を通した話し合いによって、一人で楽しむ読書とはまた違った面白さや気づきを得られるようです。このサロンはみんな楽しんでくれたので、継続することにしました。

次回は、以前、湯島のサロンでアリストテレスを話題にしてくれた遠山さんに「社会心理学講義」という、いささかハードなテキストを紹介してもらうことにしました。
できればそれとは対照的な、思い切り生活的なカジュアルな本を、もう一人どなたかに紹介してもらいたいと思っています。どなたか手をあげてくれませんか。

次回は、そのおふたりに本の紹介をお願いすることにしたいと思います。
開催日は、615日の予定です。

 

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