■湯島サロン「たんぽぽ農法~半農半Xのための野菜栽培技術」報告
私が知る限り、かなり早い時期から人間の生活にとって「農」という営みがとても大切ではないかという思いで、自らの生活の中に思いきり「農」を取り込んで人生を変えてしまった人のおひとりの増山博康さんが、最近たどりつきつつある「たんぽぽ農法」のお話のサロンでしたが、タイトルに「半農半Xのための野菜栽培技術」とついていたせいか、栽培技術の話と勘違いされたようで、参加者が少なかったのが残念でした。
しかし、増山さんのところで、農のある生活に向けての学びをしているおふたりの方が参加してくれて、そのお話も興味深かったです。
増山さんは、パワーポイントをつかい、彼が言うところの「たんぽぽ農法」の考えや目指す方向性、実際のやり方などを、畑の様子も紹介しながら解説してくれました。
増山さんは体験的に、「農業って本当は「楽」なんじゃないか」と言います。自然とうまく折り合えれば、「人がついていて、スイッチを押さなくても、野菜はひとりでに育つ」から、というのがその理由です。
何が「楽」なのかは、人によって違いますので、この増山さんの考えに同意できない人も多いでしょう。これは、先日の吉田太郎さんのサロンでも話題になりましたが、まさに、ここにこそ、問題の本質があるような気がします。「ボタンを押す」のと「雑草を抜く」のと、どちらが「楽か」、いや「楽しいか」。
いずれにしろ増山さんは、自然と対話しながら、半農半X生活を楽しく送っているのは間違いありません。たんぽぽ農法について語る増山さんは実に幸せそうです。
もちろん、雑草もひとりでに育つので、草取りの手間はある。しかし、増山さんは、雑草生態学の本などを読みながら、雑草観察に務め、雑草との付き合い方も修得したようです。そこで見えてきたのは、単に野菜づくりの農業ではなく、景観づくりやコミュニティづくりの暮らし方のようです。それを増山さんは、自分の農園「たんぽぽ農場」の名称にちなんで「たんぽぽ農法」と名付けたのです。
ちなみに、「たんぽぽ農法」を一言で言えば、「野菜の間に緑肥(土にすき込んで土作りを進める植物)やハーブなどを植え、雑草の繫茂を防ぐなどの工夫をしている農法」だそうです。
増山さんは、まずご自分の「前史」から話しだしました。
20年前に上尾の農家に弟子入りしたそうですが、そこでいろんな気づきがあった。たとえば、旧暦への目覚めです。そこから話はなんと萬葉集や中国の二十四節季へと広がりましたが、幸い?に今回はパワーポイントのおかげでさまよいだすことはなく、すぐ本題に戻りました。
増山さんは、農業技術は3つに分かれるといいます。「基本技術」「土肥技術」「シーズン技術」です。そして長年の実践を通して、効果的な伝授法を見つけてきたのです。
たんぽぽ農法は、工業物理化学的な思考を雑草生態学の知識を踏まえて、農業に適用したものだそうです。そのことを、ニンジンの周りの除草、麦とエンドウ混植、春ジャガイモの畝間にイヌムギを植えるなど、写真を使って解説。時には、ランバート・ベールの法則とかややこしい言葉も出ましたが、具体的だったので私にもわかりました。
「雑草」ともうまく共生しているといってもいいでしょうか。
感覚的に、雑草が生えていると「キレイ」でないため、農作物が育ちにくくなると言った発想で、「何が何でも除草」論が形成された可能性はあるが(そこでまた「吾妻鏡」が引用されたりしました)、ある種の雑草を利用する方法こそ大切ではないかと増山さんは言います。「雑草」も増山さんには仲間なのです。時々、畑もどき作業をやっている私にはとても共感できます。
さらには、アメリカでの「環境再生型農業」の話や農を活かしたマイクロツーリズムの話など、農の持つさまざまな効用(食料生産だけが農ではない!)も語ってくれました。
そういう話から、増山さんが描いている「たんぽぽ農法」の理念や目指す方向性が何となく伝わってきました。単なる技法ではなく、ビジョンなのです。
ちなみに増山さんは、いわゆる「有機農業」にはこだわっていません。もちろん「儲かる農業」にも多分関心がない。増山さんにとって関心があるのは「支え合う楽しい暮らし」のようです。そこでは「農」がとても大きな意味を持っている。
この日も増山さんは、自分の畑で収穫した野菜を埼玉県庁前での朝市で販売してきたそうで、残った野菜を持ってきてくれてみんなに分けてくれました。私が欲しかったニンジンは朝市で完売だったため、残念ながら私はニンジンは食べられなかったのですが。
なお、増山さんは、野菜栽培レッスンプロとして、半農予備校や菜園起業大学、体験農園や菜園教室などをやっています。また、野菜の宅配サービスもやっています。
https://www.street-academy.com/steachers/292220
増山さんは、今回の話を起点に、「たんぽぽ農法」を体系化していき、社会にも呼びかけていきたいといっています。
「たんぽぽ農法」に関心を持った方は、見沼菜園クラブの増山さんにぜひお問い合わせください。
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