■湯島サロン「〈地湧の思想〉-「じねんの暮らしサロン」に向けて」報告
〈地湧の思想〉を軸に、新しい連続サロンが始まりました。
案内役は増田圭一郎さん。
「地湧の思想」と言っても、あまりなじみがないかもしれません。一言で言えば、私たちの中に込められている「深いいのちの智慧」と言ってもいいでしょうか。
案内にも書きましたが、案内役の増田さんが、以前、代表を務めていた出版社の地湧社(創設は父親の増田正雄さん)のホームページに次のように書かれています。
私たちを育んできた大自然の中で、自然と人、社会と人、人と人が触れあう環境が、次第に生命を亡ぼす方向に進んでいることは、誰の目にも明らかです。
いま、人間の手で加工し尽くされた現代文明の下で、人々は疲れ切っています。この人々が蘇るには、汲み置きの水ではなく、地から湧きたての生きた水が必要です。
そして、これを呼び水として励まし合い、ついには自らの井戸を掘り当て、人間には想像以上の深いいのちの智慧があるのだと気づくことができたら、どんなにすばらしいことでしょう。
この姿を象徴して「地湧」という名が生まれました。
増田さんは、いまは地湧社を離れて、別の出版社を立ち上げ、出版事業と現場活動を重ね合わせながら「地湧の思想」の実践に取り組んでいます。
このサロンでは増田さんの実践と重ねながら、私たちの中に込められている「深いいのちの智慧」を湧き出たせることを目指して、さまざまな話題を話し合っていきたいと思います。
1回目の今回は、いわば総論として、祖父和田重正さんの足跡や思想、増田さんとの触れ合い、増田さん自身の生い立ちといまの関心事などを概説してくれました。
和田重正さんの思想は何冊も本になっていますが、その思想の一部、たとえば、「大脳のなす選択はほとんど正しくない」といった挑発的な命題や「自他不可分一体の人間観」など意味深長なキーワードなども紹介してくれました。
和田重正さんは、「教育の出発点は生活」という視点に立って、若者たちと一緒に暮らしながら、あるいは母親たちに呼びかけながら、教育問題を考えていた人です。増田さんは、その真っただ中で育ったわけです。
中学生時代には、森の中で暮らしていた祖父のもとに、まるで「拉致」されるように連れていかれ、そのまま森で過ごしたこともあるそうです。そこでの増田さんの暮らしぶりを聞いて、参加者の一人は、ソローを思い出したと言いました。
いずれにしろ、増田さんは、そうした祖父の思想を浴びながら育ってきたわけですが、大学卒業後渡米し、日本でもブームになった「アクエリアン革命」の著者マリリン・ファーガソンのところで、アメリカで拡がっていた「ニューサイエンス」や「ニューエイジ」の世界をたっぷりと吸い込んできたようです。同時に、ネイティブ・アメリカンの世界にも魅かれて、スピリチュアルな世界にも触れたそうですが、おそらくそのあたりはこれから展開されるサロンの中で、おのずと顕れてくるでしょう。
私も当時、そうした世界に文献などを通してそれなりに触れて、生き方に大きな影響を受けてきていますが、増田さんがまさかファーガソンのところで暮らしていたとは知りませんでした。
話の最後に、増田さんは父親が書いた地湧社の設立趣旨書を配ってくれました。
そこにはこんな文章が書かれています。
ちょっと長いですが、一部、省略して引用させてもらいます。
まったく行き詰まった現代になって、自らあてにしてきた人知の舟をおり、いのちの再生へと進路を取りはじめた人々が、洋の東西を問わず、増えはじめています。これを自覚の人々と呼びましょう。
彼らはとりたてて指導者的立場にある人ではなく、大地に根を下ろした実践をもった人々です。彼らは百姓であったり、庭師であったり、家庭の主婦であったり、市井の医師であったり、あるいは宗教者であったりします。
彼らは、生命に根ざした生き方をいち早くした人々といえます。次の時代を担う人達です。にもかかわらず、彼らはお互いに連絡を取り合うこともなく、自己との対話の中で、内面から聞こえてくる声を頼りに生活しています。彼らとは、それはあなたなのです。
深い智慧の井戸を掘りつつある、あなたなのです。生命に根ざした生き方をしている、あなたを含めたその人達は、社会の表面に露われていませんが、しかし一本の地下水脈でつながっています。この地下水脈はやがて地表に湧き出し、人類の生命の根源の水となり、人々を潤し、旧い人々が想像するような激しい変化ではなく、もっと静かに、しかし確実に、この世の変革をとげるに違いありません。自覚の時代は始まっています。
以上が趣意書の中の文章ですが、増田さんが今回のサロンのタイトルに選んだ〈じねんの暮らし〉の意味がしっかりと書かれています。大地に根を下ろし、生命に根差した生き方。サロンでは、増田さんは「食べること」と「寝ること」の大切さを話してくれていました。気づかないまま、私たちは「自覚」している。そして、自覚の時代はすでに始まっている。とても元気が出る話です。
しかも、自覚の人たちは、社会の表面に露われてはいないが、一本の地下水脈でつながっている。私が昨年初めて知って元気をもらった「菌根菌の世界」につながる話です。最近また、私は畑まがい作業を再開し、土が生きていることや生命がみんなつながっていることを日々体感しているので、とてもよくわかります。
というわけで、参加者それぞれが、「自らの井戸」を掘り当てていくことを目指したサロンが、始まりました。
ぜひ継続しての参加者が増えてほしいと思っています。
次回はまだ決まっていませんが、日程が決まり次第、ご案内します。
| 固定リンク
「サロン報告」カテゴリの記事
- ■湯島サロン「世界議会 設立構想とその実現について考える」報告(2024.11.29)
- ■久しぶりの「茶色の朝」サロンの報告(2024.11.29)
- ■湯島サロン「第2回生きとし生けるものの生きる意味」報告(2024.11.26)
- ■湯島サロン「冬の食養生」報告(2024年11月22日)(2024.11.22)
- ■湯島サロン「“コピ・ルアク”を味わう」報告(2024.11.21)
コメント