■第4回ブックサロン「100万回生きたねこ」報告
今回のブックサロンは「絵本」を取り上げました。
絵本が大好きな菅沼三貴子さんが選んだのが「100万回生きたねこ」。
菅沼さんは、ほかにも「くまとやまねこ」など10冊ほどの絵本を持ってきて、見せてくれました。その語り口から、菅沼さんがいかに絵本好きなのかが伝わってきました。
正直、私自身は「100万回生きたねこ」にはさほど魅力を感じていなかったのですが(ねこの目が好きになれませんでした)、今回のサロンで、絵本の魅力やパワーを気づかせてもらいました。たとえば、文字の全くない絵本「アンジュ-ル」にはついつい言葉を書き込みたくなりましたし、「くまとやまねこ」はそれをつかって「生と死」を語り合いたくなりました。
ともかく絵本には瞬時に人を動かす力がある。だからこそ子どもにとって大きな影響を与えるのでしょうが、むしろ、「絵本」は大人のためにあるのではないか。そんな気がしました。
菅沼さんにはおふたりの息子さんがいますが、今回、改めて子どもの頃(30年ほど前)読んでやった「100万回生きたねこ」のことを訊いたそうです。そうしたら、一人は「何度も何度も死んで、可哀想なネコの話」、もう一人は「何度も生き返る、よみがえりの話」と記憶していたそうです。同じ本を読んでも、残った印象は真反対になりえるのです。でもふたりとも、主人公のとらねこが白いネコを胸に抱いてワンワン泣く絵は覚えていたそうです。30年たっても覚えているということは、おそらく大きな影響を与えているということです。
その話を聞いて、私も子どもの頃の記憶を思いだしてみました。
残念ながら、これといった絵本が思い出せません。「キンダーブック」という絵本雑誌のことは覚えていますが、具体的な話で思い出すのは「幸福な王子」とツバメがなにやら話をしていたなということくらいです。そのうちに、絵本ではないのですが、いくつかの絵の記憶がよみがえってきました。そしてそういう絵が、私の人生にたぶん影響しているような気がしてきました。
実は、このサロンに参加するだろうなと思っていた同世代の人から「私には絵本体験がないから参加しない」と言われました。たしかに私の世代では「創作絵本」はそう一般的ではなかったような気もします。でも私の世代が子育てするようになったころには、日本にもたくさんの絵本がありました。
でも自分が絵本体験があまりないためか、私自身、娘への読み聞かせの本には関心がありましたが、絵本選びは妻任せだった気がします。話題の創作絵本の題名はいろいろと知っていましたが、娘たちと一緒に読んだ記憶がありません。
要するに私は、絵本とはきちんと付き合ってこなかった。つまり、娘たちときちんと付き合ってこなかったと言ってもいいかもしれません。そのためか、絵本の効用も、あまり実感していなかった。絵本と言えば、児童書と決め込んでいたのです。
話が個人的な思いに行きすぎました。
サロンの話に戻します。
「絵本」は「絵」と「ことば」と「声」によって、子どもたちの心にずっと残ると菅沼さんはいいます。言葉や文字中心になる前に、もっと五感すべてで付き合うために「絵本」は大きな力がある。そして、子供と大人を対等につないでくれる。
もしそうなら、相手は子どもだけではないはずです。
改めて「絵本」の可能性を感じました。湯島のサロンは、言葉に依存しすぎているとある人から指摘されたことも思い出しました。そうかもれない。
サロンに参加していた朗読ラボラトリーsの前園さんが、さらに刺激的な話をしてくれました。前園さんたちはいま、朗読に合わせて音楽を奏する活動をしているのですが、その動画、高村光太郎の「ぼろぼろな駝鳥」を紹介してくれたのです。
https://www.youtube.com/watch?v=oiSk-qpjbuU
絵に加えて音。音楽のある読みかせです。短い作品ですから、ぜひ見てください。
「100万回生きたねこ」を、菅沼さんに読んでもらい、前園さんに楽器を奏でてもらったら、どんな世界が生まれるのか。
何かものすごい可能性を感じてしまいました。
サロンの報告ではなく、サロンで感じたことや思いついたことの紹介になってしまいました。すみません。
ブックサロンの基本は、本の魅力を伝えてもらうことです。ですから今回は本の内容に関する話し合いはしませんでしたが、このサロンから「絵本をテキストにしたテーマサロン」をスピンオフさせたくなりました。
「絵本」といってしまうと児童書と思ってしまいますが、そんなことは全くない。
絵本をテキストにすれば、だれもが気楽に参加できそうです。難解な言葉など使わなくても、心や思いを交わし合えそうです。
おかしな報告になってしまいました。
実はサロンの後、何冊かの絵本を読みました。サロンにも参加したことのある篠崎正喜さんの画いた「父は空 母は大地」も久しぶりに読んでみました。
湯島のサロンでももっと「絵本」を取り上げたくなりました。いや、サロンのスタイルも変えたくなってきました。そんなことを考えていたら、報告が書けなくなってしまい、遅れてしまいました。すみません。
いずれにしろ、絵本を活かしたサロンを改めて企画したいと思います。
最後に菅沼さんが持ってきた絵本の一部を勝手に紹介しておきます。
「100万回生きたねこ」(佐野洋子 絵・文 講談社)
「くまとやまねこ」(湯本香樹実文・酒井駒子絵 河出書房新社)
「スーホの白い馬」(モンゴル民話 福音館書店)
「ずっとずっと 大好きだよ」(ハンス ウィルヘルム 絵・文 評論社)
「アンジュ-ル ある日、ある犬」(ガブリエル・バンサン BL出版)
「しろいうさぎとくろいうさぎ」(ガース ウイリアムズ ラボ教育センター)
「木を植えた男」(ジャン・ジオノ作/フレデリック・バック絵 あすなろ書房)
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