■第3回増田サロン「老子は静かなロックだ 老子の思想と地湧きの思想」報告
増田圭一郎さんの「地湧きの思想」サロンの3回目は、『老子』を取り上げました。
地湧きの思想は『老子』の思想に深くつながっていますが、それは案内文でも書いた「老子は静かなロックだ」という増田さんの言葉に象徴的に現れています。
私の主観的な理解ですが、『老子』も「地湧きの思想」も、静かですが、その静かさゆえにこそ、心を解放し高揚させながら、能動的に身心を落ち着かせる。「静かさ」の持つ「深さ」と「永続性」が、老子の思想と地湧きの思想をつないでいるのかもしれません。
『老子』がテーマということもあってか、参加者はいつもより多く、しかも増田サロン初参加の方も多い多様な顔ぶれになったのも印象的です。
『老子』はいまなお人気のようです。
まず増田さんは『老子』に関して簡単に解説してくれた後(各章のメッセージをまとめた資料も配布)、『老子』冒頭の4つの章を読んでくれました。それも、それぞれに2つの日本語訳を対照させながら紹介してくれました。
『老子』と、王明訳(『老子(全)』)と加島祥造訳(『老子新訳 名もない領域からの声』)です。いずれも増田さんが関わった地湧社版です。
『老子』冒頭の第1章は、「道可道非常道 名可名非常名」ではじまります。
中国人で詩人の王名さんは、「これが真理(タオ)だと口にしたところで、それがトータルで絶対的な真理(タオ)ではあり得ない。何かあるものを名付けてみたところで、すべては変化の中の、ひとつの過程にすぎない」と訳しています。
ちなみに王名さんは、日本語訳の多くの『老子』を読んで違和感を持ち、改めて『老子』原文をネイティブな詩人の感性で訳し直したのです(『老子(全) 自在に生きる81章』地湧社)。
その第1章に、王名さんは「不思議の不思議」と章題をつけています。続けて第2章は「美しさと醜さ」です。そこでは、「美として認識するのはすでに醜さが存在するからである」というように、二元論を超えた相体観が語られています。
さらに、第4章(道は「万物の宗主(すべての根源)」)と第6章(死を越えた母性の永遠性と深遠な受容性)が読まれました。
増田さんは、『老子』を概念的に「知る」のではなく、『老子』に直接触れることで、「道」(タオ・真理)を「感じ」、そこから「タオはジネン(自然)そのもの」であり、自然natureと対峙するのではなく、人も共にあるジネンのなかで自分を素直につらくことを大事にする「地湧きの思想」へと誘ってくれたように思います。
自分を包み込む全体と一心同体である自分を意識すれば、小賢しさや不安は消えていきます。そして素直に生きていける。私自身、そういう実感を持っていますが、「地湧きの思想」は自らから生まれてくる「ジネン」に身を任せる思想なのかもしれないと思いました。これは増田さんの言葉ではなく、私の感想ですので間違っているかもしれません。
いずれにしろ、『老子』の根底にあるのは「世俗的な価値観」の呪縛からの解放です。
増田さんも、「『老子』は、現在私たちがあらゆる目くらましに逢っていることを喝破し、常識の枠をはずしてくれる。そして、根源である「道(タオ)」や自然の理を説きながら、それに逆らわないことによって自分のなかから自然と力が湧くことを気づかせてくれる」とご自分が主宰する雑誌に書いています。
これは、「地湧きの思想」のことなのかもしれません。
こうした増田さんの話に示唆されて、いろいろな話し合いが展開しました。
私自身はつい若いころのヒッピー運動やその後のタオイズム・ブームなどのことを思い出しながら第1章に見入ってしまい、話し合いにあまり参加できずにいましたが、自然とジネンの論議もあれば、宗教論もありました。最近、中国に行ってきた人からはライブな『老子』体験の話もあったような気がしますし、クリスチャンによる『老子』の解説もあったような気がします。タオイズムの話もあったような気がしますが、でもいざ報告を書こうと思うとなぜか思い出せません。困ったものです。
参加されたどなたかフォローしてくれませんか。
最近のサロンはなぜか内容が近似してきて、私の頭の中で融合してしまっているのです。そのため、私自身混乱してきている。すみません。
とりわけ今回の増田さんのサロンと続いて行われた遠山さんの「社会心理学講義」のサロンの内容はつながっています。私はメモを取るのが苦手なので、私の中ではどちらででた話なのか区別がつかなくなっています。すみません。
増田さんは配布した資料に、『老子』に出てくる、よく話題になる言葉、「上善水の如し」とか「足るを知る」「小国寡民」など、10の言葉も紹介してくれていますが、これに関してはきちんと話し合うところまで行きませんでした。増田さんは、それぞれを自分で考えるように仕向けたのかもしれません。
しかし、このいずれかを切り口にして、「地湧きの思想」を話し合うのもいいかもしれません。そもそも『老子』は1回で学べるようなものではありません。今回はあくまでも入り口で、次回はこれをベースにさらに「地湧きの思想」に踏み込んでいければと思います。
増田さんがまとめた『老子』に関するメモを添付させてもらいます。
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とてもわかりやすくまとめられています。関心を持ったら、ぜひ王名さんか加島さんの『老子』に進んでみてください。そして「地湧きの思想」にまで。
次回の益田サロンは11月4日(文化の日の振り替え休日)を予定しています。
テーマが決まり次第、案内させてもらいますので、関心のある人は日程だけでもおさえておいてください。
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