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2025/06/18

■近藤サロン⑧「『サピエンス全史』と『万物の黎明』の世界観の違い」報告

「進化論」大好きな近藤和央さんの「『利己的な遺伝子』論から眺める人間論」8回目は、ハラリの『サピエンス全史』とグレーバーの『万物の黎明』の世界観の違いを話題にしました。
『サピエンス全史』も『万物の黎明』も、湯島の別のサロンで取り上げられていますが、今回は進化論も意識しながら、この2冊の大作をとり上げることになりました。
といっても、案内にも書いたように、近藤さんが両書を解説するのではなく、両書の背景にある「世界観の違い」を話し合うのが主旨です。テーマは「進化論」の是非。
ところが困ったもので、『万物の黎明』に挑戦したけれども途中で挫折したので、近藤さんの解説を聴いたら読まずにすむかもしれないとわざわざ新潟からやってきた不謹慎者もいまいた。それに、『サピエンス全史』はともかく、『万物の黎明』をきちんと読了した人は参加者にはいないようです。そもそも問題提起者の近藤さんも、実は自分も読了しておらず解説本のほうが面白かったなどという。
というわけで、あれだけ話題になった本なので、楽をして読んだ気になろうという不謹慎者のサロンになってしまいました。「進化論」はどこかに飛んでしまった。全く困ったものです。

ちなみに私は、両書をきちんと読了しています。しかし私の読書記憶力はとても悪くて、『サピエンス全史』は退屈だったという記憶しかなく、『万物の黎明』は面白かったという記憶しかないのです。なにしろ『万物の黎明』にしても読んだのは一昨年です。先日の山本さんのサロンで少しだけ思い出しましたが、解説などできようもない。だから、あまり偉そうなことは言えません。

さてサロンですが、いつものように、最初に近藤さんから両書の大きな違いのガイダンスがありました。両書を対比的に解説したチャートですが、そこに近藤さん好みの副読本が追加されていました。添付します。

ダウンロード - e6b9afe5b3b6e382b5e383ade383b3e291a7e38389e383a9e38395e38388.pdf

この解説を聞きながら話し合いに入りました。
近藤サロンはいつもそうですが、近藤さんの話に呪縛されることなく、参加者が自分の関心で話題を選ぶので、話し合いは面白いですが、まとめるのが難しい。
しかし、今回、話し合いの展開を聞きながら、もしかしたらこれって「グレーバー的」なのではないかと思いました。「グレーバー的」って何だと訊かれると困るのですが、

人類の歴史を一直線に「発展」や「進化」してきた目的論的進化論の物語として描くハラリやジャレド・ダイアモンドが私には退屈なのは、グレーバーが『万物の黎明』で書いているように、ヨーロッパ中心主義者の征服年代記を読んでいるような気にさせられるからです。文化人類学者のフィールドワークの作品も、どこかそういうにおいを私は感じます。
でもグレーバーは違う。彼はヨーロッパ人が好きなのではなく、人類がみんな好きなのです。だから、行きつ戻りつする歴史が書けるのです。そして、例えば私の人生が行きつ戻りつしているように、人類の歴史は一直線的に「進化」しているのではなく、可変性に満ちている。そう考えれば、大きな物語は終わったとか、資本主義は限界だなどという発想こそ、見直されなければいけません。いや、地球環境は危機に瀕しているという問題さえも書き換えられるかもしれません。
社会はいかようにも変わりうる。
ハラりの世界観とは全く違います。モモ・デウスなど生まれるはずもない。

と、報告のつもりが勝手な持論を書いてしまった。すみません。
これではいくらなんでも報告にならないので近藤さんに結局、一番言いたかったことはなんですか、といつものようにぶしつけな質問をしました。
近藤さんから帰ってきたのは次のメッセージです。

一言でいうならば、人に内在している支配や権力へ引き寄せられてしまう傾向を自覚的に「魔」と認識(「利己的遺伝子から見た」シリーズの言葉でいえばアンコンシャス・バイアスの自覚)して、自らを律すると同時に、それを社会の仕組みとして実装する知恵が、人類史の中に多く試みられていることから学ぶことが絶滅を避ける上でいちばん大きな(歴史から課せられた、人類への)試練・宿題だろうな、という感じでしょうか。

やはりあくまでも近藤さんは「進化論者」なのです。そして「学びの徒」です。
ちなみに、『万物の黎明』には、人類学者グレゴリー・ベイトソンの「分裂生成」概念が出てきます。グレーバーはこれに着目しています。分裂生成とは、「他者と自己を対立させながら自己を定義する」人間の傾向を指しますが、次回は近藤さんにベイトソンの「分裂生成」をとり上げてもらえればと思います。
そして次第に近藤サロンのメインテキストを『利己的な遺伝子』から『万物の黎明』に移していければと言う気さえします。これは近藤さんには内緒の話ですが。

おかしな報告になりました。
今日はとんでもない暑い日で、私は最近どうも心身不調ですので、こんな報告になってしまいました。このところ報告が書けずに気になっていました。
まあ「真夏の世の夢」と思って許してください。

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