■映画『ひろしま』を観る会報告その2
映画『ひろしま』を観て、話し合うサロンの報告の続きです。
昨日、話し合いの内容には触れない報告を投稿しましたが、やはり話し合いのことを少し報告したいと思います。ちょっと元気が戻ってきましたので。
映像に描かれた被爆後の惨状に関しての全体的な印象としては、よくここまで描いたという感想と同時に、原爆投下のすさまじさは描かれてないという声もありました。
当時はまだ、被爆の意味や情報があまりわかっていなかったでしょうし、米国からの制約もあったでしょう。にもかかわらず、9万人近い広島市民が出演したというのも驚きです。思い出したくなかったでしょうに。
しかし、人間が実際に演じながら描くことには限界があったはずです。
だからこそ、丸木夫妻の「原爆の図」が描かれたのです。
この映画のもとは、子どもたちの手記集です。大人たちが忖度し隠蔽するなかで、子どもたちは身心で事実を示してくれ、それが映画制作の大きな力になったのではないかと推察しますが、サロンでは福島原発事故後の子どもたちの甲状腺がんの話題もちょっと出ました。それを聞いて、学校も先生も、そして社会も変わってしまったのかな、とつい思ってしまいました。
第五福竜丸展示館でボランティア活動をしている黒田さんが、制作の背景を少し話してくれました。制作費は4,000万円(今の5億円余り)だったそうですが、その半分以上は制作主体になった日教組の組合員(学校の先生たち)のカンパだったそうです。残りは全国からの寄付。経済的にはまだ貧しかった時代によく集まったものです。子どもたちと接している先生たちの思いが、社会を動かしたのでしょう。
この映画が公開された翌年に、第五福竜丸被曝事件が起こり、それを契機に、杉並区の女性たちが中心になって、水爆実験に反対する原水爆禁止署名運動が始まります。
黒田さんからも紹介がありましたが、1955年にはアインシュタインや湯川秀樹など世界の科学者が、核兵器廃絶・科学技術の平和利用を訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」を発表。原水爆への関心が世界的に高まっていきます。
こうした状況にもかかわらず、なぜかこの映画は大きな動きを起こさなかったのです。
核兵器反対への動きは広がっていきますが、一つのうねりにはなりませんでした。これに関しては、先日のSUN10ROサロンで話題になった黒澤明の映画「生きものの記録」に関しても言えることです。
せっかく被爆者を含む9万人近い広島の人たちと全国の子どもたちと接点を持つ先生たちが思いを込めて取り組んだのに、流れは変えられませんでした。
たぶんそこに「政治」が入ってきたのでしょう。さらにまた、広島の市民ほどには、他の地域の人たちには「自分の問題」とは思えなかったのでしょう。余裕がなかったのかもしれません。
そして、1955年には原子力基本法が成立し、原子力の平和利用へと動き出すのです。
核兵器と原子力発電とは英語ではいずれも“nuclear”が使われますが、日本語では別々の言葉が使われるため、なかなかつながりません。しかし、福島の原発事故で明らかになったように、両者は本来同じものです。「平和利用」という表現がありますが、原爆投下もアメリカでは「平和(戦争終結)のため」とされていました。
言葉に騙されてはいけない。そんな話もサロンでは出ました。
いろんな話の後、この映画を観て私たちには何ができるだろうかという話になりました。
湯島のサロンでは、知識を得るのではなく、行動につなげていくことを大切にしています。知識は行動に移さなければ意味がありません。「知った者の責任」もある。
被爆体験の事実を多くの人に知ってもらうこと、そしてそれに関して、思いをぶつけ合うことが大切ではないか。何ができるかをそれぞれが考え、自分のできることを身近なところから始めるのがいいという話もありました。
たとえば、この映画の存在を友人知人に知らせるだけでもいいでしょう。それならだれにでもできる。できることはいろいろある。
最近は、核兵器で安全保障や平和を手に入れようとか、経済成長のために原発を増設しようなどという意見の人が増えてきています。ヒロシマもナガサキも、フクシマも、第五福竜丸も、みんな忘れてしまったのでしょうか。
ぜひみなさんにもこの映画を観てほしいと思います。
そして周りの人と話してみてほしいです。
話す人がいなかったら湯島に話に来てください。
もしみんなで、核兵器や原発に関して話し合いたいという人がいたら、サロンを企画しますのでご連絡ください。
映画『ひろしま』は下記のサイトで自由(無料)に見られます。
まだの方はぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=O66BcBeoSj8
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