■第8回増田サロン「自我と不可分一体のいのちの世界〜AIに魂は宿るか」報告
増田圭一郎さんと一緒に「地湧の思想」を考えていく連続サロンも8回目になりました。今回のテーマは「自我と不可分一体のいのちの世界」ですが、増田さんは副題に「AIに魂は宿るか」とつけました。
サロンは、まず副題の「AIに魂は宿るか」から始まりました。
ニューサイエンスなどで言われるグローバルブレインのように、ITの進化で人類の知恵の一体化が予測されているが、果たしてAIの進化でそうなるのか、と増田さんは問いかけます。
意見はいろいろでしたが、湯島のサロンで以前、先端技術に関するサロンを何回かやってくれた山森さんは、遠い先にはたぶんAIは魂を持つだろうと言います。もっともその時のAIは無機的な機械というよりも、むしろ有機的な生命と融合していくような「新しい生命」というようなものになるかもしれないというのです。もちろん数十年後に見込まれているシンギュラリティなどという話ではなく、もっと長期的な展望です。魂を持つということは、いのちを得るということでしょう。
それに対して、増田さんはどちらかと言えば否定的なようです。
この問題に関連して、増田さんはもう一つ、機械に命を預けられるかという問いを出しました。むかし軽飛行機のライセンスをとるために学校に通っていた時に、インストラクターから「どちらか迷ったときは、自分の感覚でなく、計器を信じなさい」と言われたそうですが、自分の命がかかっているのに全面的に機械を信じることができるかと自問したそうです。
人間の判断よりも機械の判断が正しいことは少なくありませんし、むしろこれから増えていくでしょう。でも果たして最後の決断を、機械に任されるかという問いです。
これはとても「深い問い」です。「いのちとは何か」「自我とは何か」「生きるとは何か」という問いにつながっていきます。
そして本題の「自我と不可分一体のいのちの世界」に話題は移りました 。
ここはまさに「地湧の思想」のど真ん中につながる話です。
それを解く補助線として、増田さんはバタフライエフェクト、つまり複雑系の科学と、エコーチェンバー、さらにかつてオムロンが提唱していた、人と機械の関係を柱にした「最適化社会」の話を紹介してくれました。
しかし、補助線が話をさらに複雑にしてしまったような気もします。
もっと直截に、「自我」と「いのちの世界」、あるいは「自然(じねん)」との「不可分一体化」の関係を話し合った方が話は早いような気もしますが、増田さんは意図的に、回り道しているようです。
それを意図してか、さらにじねん(自然)ではないnature(自然)の話や、芸術の話、身体性や宗教にまで、視野を広げさせてくれました。
複雑系の科学は、物事の捉え方を一変させました。
すべてがつながっていること、因果の流れは一様でも一方方向でもないこと、ミクロがマクロにつながっていること、世界はフラクタルに重層していることなどを、科学に持ち込んできたのです。そして、存在よりも関係に目を向かせ、いのちは決して閉じられていないことを示唆してくれたのです。
そうなると「不可分一体化」ということの意味も、変わってきます。不可分は同時に可分であり、一体は同時に距離を持っているのです。さらに言えば、自我と世界は不一不ニなのかもしれません。自然(じねん)と人は根元的に一つ。
となると、最初の問いの「AIに魂は宿るか」という問いの答えもややこしくなってきますし、最終決断を機会に任すとか自分で判断するとかいう議論も、成り立たなくなってしまうかもしれません。
いやそれ以上に、「自我」とは一体何かが、ますますわからなくなってくる。
サロン終了後、参加者から手紙が届きました。
「自我は減らしていくことが大切ですね」と。
自我(エゴ)を削っていくと真の自我(アートマン)が輝き出す、というのです。サロンでもある人が発言していましたが、まさに「エラン・ヴィタール」、いのちの躍動!。
地湧の思想はまだまだ深くて、なかなか私にはたどりつけません。
今回はかなり勝手な解釈をしてしまった報告になってしまいました。
サロンに参加した人たちは、それぞれ違う示唆を受けているかと思いますが、それがサロンの意味ですので、勝手な解釈もお許しください。
増田さんは、次回の持越し課題として「AIと宗教」を挙げていましたが、次回はもしかしたらまた別の視点からの「地湧の思想論議」になるかもしれません。
なお、地湧の思想のもとになっている和田重正さんの著書などに関心のある人はお申し出ください。増田さんにつなげるようにします。
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