湯島のサロンでは、テーマにこだわらず、〈働き方〉とか〈生き方〉がよく話題になります。そこで今回は、そうしたテーマに正面から立ち向かうサロンを企画しました。
私の周りには、自分の生き方と重ねて仕事を捉えている人が少なくありませんが、今回は学生の頃から、その生き方にささやかに触れてきている橋本典之さんに問題提起をお願いしました。岐阜の高山で、生き方と働き方を模索している20代の川端修平さんにも参加をお願いしました。働き盛りの30代の人の参加もありました。
橋本さんは、有名なイソップの「3人のレンガ職人」の話から始めました。
3人のレンガ職人に「何をしているのか」と尋ねると、1人目は「レンガ積み作業」と答え、2人目は「壁を造る稼ぎ仕事」と言う。3人目は「人々の心を支える大聖堂を築いている」と語る。同じ作業でも、目的意識や仕事の意味づけによって姿勢や価値が大きく変わることを示す寓話で、働き方を考える材料でよく語られる話です。
そこに橋本さんは、さらに3人の人の答えを追加します。
4人目の人は、「もっと良いやり方を考えている。どうすれば楽に、良いものが作れるかね」。5人目は「この仕事を通して、自分も成長しているんだ」。そして6人目は、「ここには仲間がいて、自分の役割がある。ここで働くことが、自分の居場所なんだ」。
そして橋本さんは、「働く」ことには6つの意味があるというのです。
つまり、「作業」「生活」「意味」「改善」「成長」「居場所・関係性」。「働くこと」が持っている多様な側面、多様な価値を6つに整理してくれました。
いずれも「人生」につながっていますが、つながり方は大きく違います。
つづいて橋本さんは、これまで自分がかかわってきた「仕事」を振り返ります。
そして、そうした仕事に関わってきたのは、4つのキーワード、「必然」「偶然」「納得」「選択」で整理できるというのです。
そして、まさにそれこそが「人生」でもあると言っていいでしょう。
「仕事」が「人生」を決め、「人生」が「仕事」を決めている。
しかし、「仕事」と「人生」、どちらが大切でしょうか。
ここが今回のサロンの論点の一つでした。
その前に、「必然と偶然」「納得と選択」に関して、興味深い話し合いがありました。
それぞれのテーマでサロンのテーマにしたい内容ですが、紹介しだすと長くなるので、報告は省略。
仕事というと、「稼ぐこと」と、ついつい短絡的に考えがちですが、橋本さんはむしろ、「改善」「成長」「居場所」にこそ意味を感じているようです。
ここで橋本さんが言う「改善」とは仕事に対して主体性を持つこと。与えられた業務をこなすのではなく、その仕事を自分なりに消化し、より良い形にしていくこと。つまり、「仕事創り」と言ってもいい。
仕事は、しかしいつも順調に進むわけではない。
参加者の一人は、せっかく自分に合った仕事に出合えたと思っていたのに、この春、担当が変わってしまった。組織で働いていると、納得して仕事を選択することばかりではなく、仕事が与えられてくることもある。
橋本さんは、そこでも主体性を発揮すべきだといいます。いや、主体性を発揮する機会ととらえてもいい。「改善」に取り組むことで、与えられた仕事も自らの選択した仕事へと変えていけるかもしれません。
そして、そうした行動を通して、自らも「成長」する。
そうして仕事は、自分の「居場所」になっていく。
他者とのつながりも生まれてくる。
しかし、「居場所」には注意しなければいけない面もある。
居場所を守るために、つまり組織を守るために、意に反することに取り組まなければいけなくなることもある。特に会社のような組織に属している場合、現場と経営との視点の違いから、判断が違ってくることもあるからです。
どちらを基軸にするかは難しい問題です。現場か経営か。組織か自分か。
そこで、かつて企業の世界で話題になった、スカンジナビア航空の「真実の瞬間」の話が出ました。現場を基軸に考えることで、経営を立て直した話です。
こんな感じで話はいろいろと展開しました。
経営や経済の話も出ました。いろんなエピソードも紹介されました。
ところで肝心の「「仕事」と「人生」、どちらが大切か」です。
今回、参加した人の意見は、「人生」こそ大切ということでした。しかし、人生が大切だからこそ、「稼ぐこと」も大切だともいえます。確かに「仕事の意味」は大切ですが、「生活」のために稼ぐことも必要ではないか。
そこから、お金がないと生活が成り立たない社会のあり方へと、いつものように話は進んでいきます。
「稼ぐ=仕事」や「お金がないと生活できない」という発想に、私たちはあまりに縛られているのではないのか。そんな気がします。
橋本さんが言うように、『仕事』に6つの意味を持たせることで、まさに仕事こそが人生ともいえるのではないか。もしそうなら、「「仕事」と「人生」、どちらが大切か」という問題は適切ではないのかもしれません
一時期、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がはやりましたが、考えてみるとおかしな言葉に感じます。ここは単に「ライフバランス」でいいような気がします。
「よく働きよく休む」で有名なデンマークの人たちは、「仕事はあくまでも幸せな人生を送るための手段であり、主役は「幸せな人生」」だと考えているそうです(針貝有佳著『デンマーク人の休む哲学』)。
しかし、「仕事」と「人生」を手段-目的の関係ではなく、どう重ねていくかが大切なのではないか。そしてそれをAIが可能にしてくれるのではないか。
そんなことも考えさせられるサロンでした。
このテーマも、もう少し続けて話し合っていければと思います。
私たちの働き方、生き方で、社会も未来は変わっていきますので。
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