カテゴリー「企業時評」の記事

2023/10/16

■がん民間療法体験26:天日塩の入った味噌

前回書きましたが、昨日、手づくりの天日塩の入った味噌が届きました。
私のこの報告を読んで、送ってくださったのです。
前もって、送ってもいいかとの問い合わせがあったのですが、その心遣いもうれしかったです。

送ってくださったのは、10年以上前に一度しかお会いしていない人です。
私は、当時、あるビジネススクールで毎年1回、ビジネススクールらしからぬ講義(収益よりも大切なことがある)をさせてもらっていたのですが、その人はそのスクールのスタッフの方で、私の話を聞いてくれた関係で、終わった後、少し立ち話させてもらっただけなのです。その縁で、フェイスブックで緩やかにつながっていたのです。それが11年前。

人の縁とは、本当に不思議なものです。
ちょっとした立ち話でしたが、私も彼女の生活にちょっと興味を感じ、記憶にずっと残っていたので、今回、連絡をもらってすぐに思い出したのです。

荷物を開いたら、お味噌のほかにジャガイモが入っていました。
同封の手紙によれば、庭で育てたジャガイモだそうです。
お味噌は、肥料を使わずに、雑草と同じように育った黒豆と緑豆が材料だそうです。

手紙には、「この度、私が自慢したい手前味噌を召し上がって頂けるとのことで、うれしいです」とあります。
その気持ちが、またとてもうれしく、もうがんなどふっとんだ気さえします。
終盤に入った40日奇跡プロジェクトの、新しいメニューとして、毎日この手前味噌(送ってくださった人の名前をとって〇〇味噌と呼んでいます)を少しずついただくことにしました。

今日はまず朝はクラッカーにつけて、午後3時に、いただいたお芋をふかして、それにつけて食べました。
私は味噌田楽も苦手で、これまでほとんどお味噌そのものをたべたことはありません。
でも、この〇〇味噌は、作り手が自慢したくなるのがちょっとわかるほど、おいしかったです。気持ちがとてもこもっているからかもしれません。
それにこのジャガイモもまた、ほくほくしていて、実においしい。
味噌もともかく、何やらとてもうれしい民間療法です。

ついでにこの療法に取り組んだおかげで、もう一つ別の食生活療法メニューが増えそうです。
それはまた改めて。

| | コメント (0)

2022/11/18

■『働きがいのある会社とは何か 「働きがい理論」の発見』をお勧めします

久しぶりに企業経営に関わる本を読みました。
ロバート・レベリングの『働きがいのある会社とは何か 「働きがい理論」の発見』(晃洋書房)です。アメリカで出版されたのはかなり前ですが、ようやく日本でも翻訳出版されたのです。

ロバート・レベリングといえば、「働きがいのある会社」という視点からGPTWGreat Place to Work)モデルという「働きがい理論」に基づく企業評価を始めた人です。
企業評価のプログラムはいろいろとありますが、GPTWモデルの特徴は、働く人の視点に立っていることです。これは他の評価スキーム(ほとんどが経営者の視点での評価)と思想を異にしています。そしてそれを裏付けている経営思想も企業観もこれまでのものとは全く違うのです。

この調査を日本に紹介したのは、当時日本能率協会にいた斎藤智文さん(淑徳大学教授)ですが、斎藤さんは「働きがいのある会社‐日本におけるベスト25」など、それに基づく何冊かの本を執筆しています。
http://cws.c.ooco.jp/books.htm#080831
http://cws.c.ooco.jp/books.htm#100509

私は10年ほど前までは、話題になった経営書にはほとんど目を通し、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューも毎月読んでいました。企業のあり方が社会の方向性を決めていくと考えていたからです。
しかし、21世紀に入って、企業経営論があまりに目先の利益主義・効率主義に覆われてしまい、私の経営論とは真逆なものになってしまいました。ささやかながら、そうした流れに抗っていましたが、最近は力尽きてしまっていました。

そんな時に、斎藤さんたちがまた、この本を翻訳出版し送ってきてくれました。久しぶりに読ませてもらいました。改めて従業員視点に立った「働きがい理論」を読んで、久しく興味を失っていた企業経営への関心が戻ってきました。

GPTWモデルの経営思想は、一言で言えば、従来の経営思想と違い、人の視点に立って経営を考えていることです。
GPTWモデルの基礎になっているのは、実際に企業で働いている現場の人へのインタビューです。そこで働いている人が、生き生きとしてくれば、結果として企業も生き生きして業績も上がっていくというのが、GPTWモデルの経営思想です。

従来の経営書のほとんどは組織の視点で経営を考えています。
たとえば、ドラッカーの経営思想は、企業の主要な目的を「顧客を創造すること」とし、そして企業を効果的に経営する能力のあるプロフェッショナルなマネージャーを創り出すことに視点が置かれていました。いささか極端に言えば、従業員は「人材」という経営資源(要素)の一つでしかないのです。さらに言えば、外の人たちは「消費者(顧客)」として、これもまた経営の手段に位置づけられてしまっています。

本書では、「経営思想が邪魔をする理由」という第Ⅲ部で、テイラーやメイヨー、ドラッカー、トム・ピーターズの経営思想に触れていますが、それらには経営者と従業員の関係に触れているものがまったくなく、むしろ経営理論が働きがいのある会社を創るための弊害になっていると断言しています。斎藤さんもこの点に触れて、日本ではこういう書き方のできるジャーナリストも経営学者も一人もいませんね、とメールで書いてきましたが、同感です。この40年、日本の企業の多くもまた、そうしたドラッカー経営学によって、人間不在の組織になってきているように思います。

本書の目指す企業は、人のための「いい職場」の実現です。
レベリングは、「いい職場を良きものにすることを一言でいえば、そこでは働く人たちが人間のように扱われていると感じているということである」と書いています。また、「いい職場は、会社のために働く人々は会社そのものであり、そのニーズは必ずしも組織の他の目標に従属するべきではないと宣言している」とも書いています。
そこでの従業員は、決して経営の要素(人材)ではなく、表情を持った人間なのです。

組織と人とどちらを基点にするか。そこにこそ思想の違いがあります。
組織にとって人を資源(手段)と考えるのか、人にとって組織を仕組み(手段)と考えるのか。そこでは組織とは何なのかという思想的な違いがあります。
組織を使って人が豊かになるのか、人を使って組織を大きくするのか。人のための組織なのか、組織のための人なのか。どちらが目的でどちらが手段なのか。
経営者のための会社なのか、働く人たちみんなにとっての会社なのか、と言ってもいいかもしれません。

斎藤さんは、改めて本書を企業経営者や働く人たちに読んでほしいと言っています。
私も、アメリカ流の経営学による経営者視点の経営論がどういう企業を生み出してきたかを考えるとき、いまこそ改めてもう一度、働く人に基点をおいた経営を考えることが大切ではないかと思います。
そもそもそうした「働く人に基点をおいた経営思想」こそ日本的経営の強みであり、それが1970年代の日本企業の発展をもたらしたのではないかと私は思っています。

というわけで、私も本書を経営者や経営幹部のみなさんはもちろん、働く多くの人たちに読んでいただきたく、紹介させてもらいました。起業の参考にもなると思います。
活字は小さく、また2段組みで、ちょっととっつきにくいですが、内容はとてもわかりやすく、気楽に読めるはずです。

できれば年明け後に、斎藤さんにお願いして、本書をテーマにしたサロンも企画したいと思っています。

| | コメント (0)

2022/10/04

■20年ぶりにかっぱ寿司に行きました

連日テレビでかっぱ寿司の前社長の不正行為が話題になっています。
いつもならこういう会社は、ボイコットするのが私の姿勢なのですが、今回はなぜか応援したくなりました。
経営陣の不祥事ですが、実際に店舗で働いている「非正規雇用」の人たちには関係ない話だと割り切ることにしました。
それで応援したくなったのです。

それで娘に頼み込んで久しぶりにかなり遠くにあるかっぱ寿司に行きました。
かっぱ寿司には話題になり始めた頃、一度だけ行ったことがありますが、以来、20年以上行ったことはありません。

大きな店舗で、店舗自体には清潔感がありましたが、お客様はまばらでした。
いつもの状況を知らないので、比較はできませんが、何となく活気がない気がしました。
仕組み上の問題点はいくつか気づきましたが、そんなことは店舗側はもうすでに知っていることでしょう。
残念ながらお寿司自体は私の好みではなく、あまり食べられませんでしたが、それでも頑張って食べました。まあそんなことでは応援とは言えませんが。
何かできることがあれば考えたいと思っています。

ところで会計時、お店の人に事件の反響はどうですか、と質問したかったのですが、一緒に行った娘から止められました。それに聞いたところで、私にできることが見つかるとは思えないのでやめましたが、本当はエールを送りたかったのです。

外食産業、とりわけチェーン店に関しては、コスト競争の激しさに大きな違和感があります。
農業には、CSA、地域で支える農業という仕組みがありますが、食に関しても「地域で支える食事どころ」という発想がもっとあってもいいと思います。コスト発想だけではなく、そういう発想でレストランや食堂をパラダイムシフトしたら、みんな幸せになるのになあといつも思っています。

コストに縛られない、地域に支えられ、地域を支える個店が、テレビで時々話題になりますが、もうそろそろコスト至上主義から解放されたいものです。

みなさんの近くにもしかっぱ寿司があれば、ぜひ一度行ってみてください。
私はまた行こうと思っています。
少なくとも、かっぱ寿司を嫌わないでほしいです。
これまでの私の主張とは必ずしも整合しないように思われるかもしれませんが、一応、私の中ではつじつまは合っているのです。
よろしくお願いします。

| | コメント (0)

2022/07/13

■原発事故の損害賠償を受ける覚悟があるのでしょうか

福島原発事故の経営責任を問う株主代表訴訟で、東京地裁は旧経営陣5人のうち4人に対して、13兆円の損害賠償を命じました。先日の国家責任を否定する最高裁判決が出たこともあって、いささかの不安がありましたが、ちょっと安堵しました。
おそらく最高裁では判決は反転するでしょうが、これからの経営者の行動に大きな影響を与えると思うからです。少なくとも、経営者の責任に関する議論が深まることは間違いありません。

 昨日、湯島で「原爆と原発」を話題にするサロンを開いていました。その報告はまた改めて書きますが、原発について私たちはあまりにも知らなすぎるように思います。しかし、原発の危険性に関しては、それこそ当初から言われていたことであり、事業を導入する経営者であれば、知らないとか想定外などと言えるような話ではありません。正常な感覚を持っていれば、とても恐ろしくて原発事業に取り組もうなどとは思わないでしょう。それが可能になったのは、それこそ「産軍複合体」ではありませんが、一企業を超えた大きな経済政治複合体で、責任を消し去る仕組みをつくったおかげではなかったのかと思います。

そこまで言うと話が大きくなりすぎますが、法人制度の持つ危険性や経営者を引き受ける意味が明確になったということだけでもよかったと思います。
私も以前は、会社組織とは個人が大きなリスクに立ち向かうすばらしい仕組みだと思っていました。しかし、20年ほど前から少し考えが変わりだしました。
会社組織とは、個人のリスクを回避させることにより、無責任な思考(人間)を育てる仕組みなのではないかと思うようになったのです。

原発事業は損害保険を引き受ける保険会社がないほどのリスクの大きい事業なのです。
そんな事業をよくまあ引き受ける経営者がいるものだと、私はずっと思っていました。
おそらく東電の経営者は、原発の現場をしっかりとは見ていないでしょう。
そこで従業員がどんな仕事をしているか。

いや知らないのは東電の経営者だけではありません。
多くの日本人は知らないようです。
原発再稼働の動きが高まっていますが、それを支持する人たちは、万一の時に個人的に損害賠償に応じる覚悟があるのでしょうか。

この判決は、私たちすべての国民に、そういう問いかけをしているように、私には思います。
話が少しずれてしまいました。書いているうちにだんだん悲しくなってきてしまったためです。
困ったものです。

| | コメント (0)

2022/05/18

■「新しい経済」に向けての2冊の本をお薦めします

週末に雨が降ってどろどろの畑には行けなかったので、晴耕雨読ではありませんが、週明けの2日間、読書に埋没し、2冊の本を読了しました。
偶然選んで、並行して読んだのですが、深くかかわっている2冊でした。

一冊は、スペインやポルトガルで活動している4人の経済学者が書いた「なぜ、脱成長なのか」(NHK出版)、もう一冊はアダム・スミスの評伝「アダム・スミス 共感の経済学」(早川書房)です。
いずれも今の経済の問題をわかりやすく指摘し、それにどう向かうかを示唆しています。

「なぜ、脱成長なのか」には、コモンズをつくり、維持し、享受していくプロセスを意味する「コモニング」という言葉を登場させています。
これは私の長年のテーマである「コモンズの共創」につながっていますので、とても共感できます。著者たちも関わっているであろうバルセロナの事例も元気が出ます。

「アダム・スミス 共感の経済学」は、「共感」を通じた人間への深い理解を中心にした「人間の科学」という捉え方から、「経済学」を根本から捉え直そうと呼びかけています。フェミニスト経済学の視点は、私が今湯島で始めた「生活事業研究会」につながるものを感じます。
私のアダム・スミス理解はまだまだ狭かった気がします。「道徳感情論」も一応は読んではいるのですが、経済学者だという思い込みが強すぎました。

同書の最後の部分を引用させてもらいます。

この偉大な業績の価値を正しく評価した人はまだいない。過激思想や誤った事実認識が渦巻き未来の見えない今日の世界にあって、スミスの知恵と思想は、その合意まで含めていまなお有効だ。私たちは過去のどの時代にも増してアダム・スミスを必要としている。

本書を読み終えて、その意味がよくわかります。「新しい資本主義」が議論されていますが、委員のみなさんにはぜひ読んでほしいものです。

いつものように、2冊を並行して読んだのですが(一方に疲れると他方を読む感じで)、今回は偶然にも同じテーマにつながっていました。いずれも「新しい経済」「新しい生き方」を示唆するものでした。
この本はお薦めです。

友人が私が6年前に書いたフェイスブック記事を思い出して、なぜか昨日、シェアしてくれました。
それを読んでなんだかうれしくなって、2冊の本を紹介してしまいました。
前者は軽い本なのですぐ読めるでしょうが、後者は少しハードです。
でもいずれも多くの人に読んでほしい本です。

6年前の記事も改めてシェアさせてもらいます。
https://www.facebook.com/notes/355354392247074/

斉藤さん、思い出させてくれてありがとうございます。
しかし何というシンクロニシティでしょうか。

| | コメント (0)

2021/10/07

■「今日の仕事は楽しみですか」

今朝のテレビで、ある企業が品川駅の構内に出したメッセージ広告に関して、ネット上で炎上し、1日でその広告が片付けられたということを知りました。

問題になった広告は
「今日の仕事は楽しみですか」
というメッセージです。

私には、なじめるメッセージですが、多くの人にはあまり気分のいいメッセージではなかったようです。たしかに、受け手の気持ちに寄り添っていない、目線の高いメッセージですから、不快になる人が多いでしょう。

ただ、そのメッセージには、続きがあるのだそうです。
テレビの画像からは、どこに書いてあったのかわかりませんが、テレビ報道によれば、次のような言葉で始まる文章がついていたようです。

今日の仕事が楽しみだと、
思える仕事が増えたら、
この社会はもっと豊かになるはず。

これにはそう異論はないでしょうが、この文章は宛先がありませんから、メッセージにはなりません。それに、私には文章としてもおかしいような気がします。
2行目は「思える人が増えたら」でしょう。
それに「豊かになる」とはどういうことか、もよくわからない。
広告を出した経営者の善意は疑いませんが、管理者目線の独りよがりにはちょっと違和感があります。

私が以前、企業変革に取り組んでいた頃、みんなで議論して、自分たちの会社を「月曜が楽しい会社」にしようと決めた会社があります。
その会社の将来に大きな期待を持っていましたが、残念ながら経済環境の激変から、その会社は倒産してしまいました。
私は、せっかくの理念を活かせば倒産は免れたと今でも思っていますが、この会社の理念と今回の品川駅での広告メッセージを比較すると、大きな違いがあります。

というわけで、今度、湯島のサロンで、この話題を取り上げようと思います。
ちょっと表現を変えて、「あなたは仕事が楽しいですか」。
どなたか問題提起したいという方がいたら、ご連絡ください。

| | コメント (0)

2021/09/16

■45歳定年制に賛成

サントリーホールディングスの新浪社長が、「45歳定年制」の導入を提言して大きな波紋を呼んでいます。
大方の意見は、否定的で、そこに経営者の人件費削減の意図を感じているようです。
たしかにそういう意図はあるかもしれませんが、私はこの提案に賛成します。

私は47歳で会社を辞めました。
そこで得たものは、自分の人生を自主的に生きるということです。
会社時代もかなり自由に振る舞ってきたつもりですが、辞めてみて、やはり多くの呪縛の中にいたことを痛感しました。
会社や上司や同僚を口実に、自分を納得させていたことにも気づきました。

もう一つはいかに無駄が多かったかを知らされたことです。
交際費で充当されていた食事は、個人になってからはほとんど味わうことはありません。
無駄だったのはお金だけではありません。時間もかなり無駄遣いしていた気がします。
いろんなパーティにも参加させてもらいましたが、いま考えるとまさにバブルな感じでした。

会社を辞めて、私の生き方は変わりました。
さまざまな意味で「節約」し、無駄を晴らし、納得できないことには加わらないようにしました。
経済面では収支は激減しましたが、物を大事にする生き方は取り戻せました。
高価な食事とは無縁になりましたが、おいしいと思うものは前よりも増えました。

なによりも、自分の思うように生きることで、精神的ストレスはなくなりました。
時々、お金が無くなってその工面に苦労したり、時にはおいしいウナギを食べたいなと思うことはありますが、それもまた生きていることの実感を与えてくれます。
何かが欠けていることは、幸せの条件かもしれません。

長々と余計なことを書いてしまいましたが、私が45歳定年制に賛成なのは、組織に人生を任せて従僕のような存在になってしまうことを前提にしない社会がはじまるからです。

労働には、雇用労働と協同労働があります。
誰かに雇われて働くのと自らが主役になって働くのの違いです。
45歳までは雇用労働として組織で働き、遅くも45歳になったら自立して働く社会。
前者は「お金のための労働」という意味合いがあるとしても、後者は「自分の人生のための労働」という大きな違いが出てくるように思うのです。
そうした「働き方改革」につながる展望を感じるので、45歳定年制に賛成なのです。

そろそろ私たちは、法人中心社会から卒業して、生身の人間の社会に、歴史を一歩、進める時期ではないかと思っています。
言い方を換えれば、近代的進歩の流れを反転させて、のどかな人間の時代に戻ろうという話です。
会社は人間にとっては手段であって、仕えるべき主人ではありません。
舌足らずなので、異論反論をたくさん受けそうですが。

サロンをやってみてもいいかもしれませんが、組織人はあまりサロンに来ないので、話し合いが難しいかもしれません。

| | コメント (0)

2021/09/06

■第1回リンカーンクラブ研究会報告

リンカーンクラブ代表の武田文彦さんからの呼びかけの第1回リンカーンクラブ研究会は9人の参加者があり、予定時間を大幅に超える熱い思いがぶつかり合う会になりました。
ちょっとみんな熱くなりすぎて、危うく壊れそうになるほどでしたが、かなりみんな真意も吐き出したので、何とかおさまり、逆にこれからの展開も見えてきました。

ご案内の通り、参加申し込みいただいた方にはあらかじめ膨大な原稿が送られてきました。それに一応目を通したうえで、皆さん参加されましたが、最初に武田さんからは、こう問いかけられました。

考えていただきたいことがあります。

他人やほかの本からではなく、現代の日本という国家についてのみなさんの国家観についてです。
さらに、歴史観です。今の時代は日本にとってどういう時代なのかということです。
もう一つは、経済観です。経済というものをどう考えるかです。

この、国家観、歴史観、経済観、それぞれ考えていただいたうえで、この3つの要素の連関性についてお考えいただきたいのです。
それぞれの考えに論理的に大きな矛盾が生じないようにしていただくという作業になります。バラバラではあまり意味はありません。

国家観、歴史観、経済観は単独では成立しません。
それは人体の各臓器とその作用のような物だと考えています。国家という生体が生きていくうえでの基本的な機構かもしれません。
こうすることで構想というものが生まれてくるような気がします。
こうして、初めて、日本の現代と未来の問題が見えてくると思います。
そして、現代の個人と国家の関係のあり方もまた見えてくるような気がします。

これが長年の武田さんの取り組み姿勢ですが、こう正面から問われると、いささかたじろいでしまいます。それに突然言われても、そう簡単にな話せない。

しかしめげずにみなさんそれに応じて、自論を話すことから研究会は始まりました。
参加者全員が話し終わった時はすでに予定の時間が終わるころでしたが、それから話し合いがはじまりました。

と書くといかにも整然と会が進んだように感じるかもしれませんが、原稿に対する批判や実際の運動につながっていないという厳しい批判もあり、さらに終盤になって個別的な政策課題に話題が行ってしまったために、話し合いは混迷し、あわや空中分解になりそうでした。
しかし、武田さんが呼び掛けたように「他人やほかの本から」の知識的な情報のやりとりではなく、それぞれの本音の話し合いだったので、各人の思いも見えてきて、逆にこれからの展開の手応えがあったような気もします。
本音の思いは、そう簡単には伝わり合えません。それがわかっただけでもよかった気がします。

いずれにしろ今回の話し合いを踏まえて、10月に第2回目の研究会を開催するとともに、並行して、リンカーンクラブ構想の話やその理念でもある究極的民主主義の紹介などのサロンも行うことを考えていこうということになりました。

研究会は基本的にはメンバー制で開催していきますが、関心のある方には公開していくスタイルをとる予定です。
関心のある方はご連絡いただければ、次回の案内などさせていただきます。

20210905

| | コメント (0)

2020/08/24

■家の前にトイレットペーパーがワンパック置かれていました

私の住んでいる地域では月に1回、新聞紙を回収してくれる業者がいます。
新聞紙一袋に対してトイレットペーパー2つを置いていってくれます。
雑誌や書籍も置いておけば回収してくれます。
行政のごみの回収でも持っていってくれるのですが、わが家の場合、ごみを出す場所がちょっと離れているので、重い書籍や雑誌はそこまで持っていくのが大変なので、ついついその業者の方にお願いしてしまいます。
ただわが家は道の突き当りに位置していて、業者の方が回ってくるのがいつも最後のようで、用意してきたトイレットペーパーがなくなってしまい置かれていないことが時々あります。

昨日はその回収日でした。
昨日、駅まで迎えに来てくれた娘が自動車の中で、家のドアを開けると驚くものがあるよ、というのでなんだろうと思ったら、トイレットペーパーの大きなパックでした。
回収後、家の前に置いてあったそうです。
昨日出しておいた新聞紙は一袋、それに雑誌類と書籍がありましたが、本来であればトイレットペーパーは2つでいいのです。
それがなんと18個も入っています。

以前、回収時に孫がちょうど来ていて、その方にお礼を言ったら、1つおまけにトイレットペーパーをくれたという話は聞いていましたが、私は一度しかお会いしていません。
しかしなぜかとてもうれしい気分になりました。

こうしたちょっとしたことで人は幸せになるのです。
さてどうしたら回収する方に謝意を伝えたらいいでしょうか。
そんなことを考えるのもまた楽しみです。

ビジネスは金銭の交換ではありません。
金銭の交換はほんの一部でしかありません。
そのことが忘れられているのがとても残念です。

昨日のサロンでも、ちょっとそうした話にも触れさせてもらいましたが、あまりにも金銭中心での生活になじみ過ぎてしまっているためか、誰もそこから抜け出せないでいるのが残念です。

Img_20200824_083612

| | コメント (0)

2020/07/17

■企業経営関係の本を2冊、紹介させてもらいます

久しぶりに企業経営関係の本を2冊、紹介させてもらいます。
「カイゼン4.0-企業にイノベーションを起こす」と「トヨタチーフエンジニアの仕事」です。書名からのイメージとは違い、企業関係者だけではなく、さまざまな立場の人にも示唆に富む内容なので、紹介させてもらうことにしました。

いずれも個人を起点に置いて企業経営に取り組んできた体験をまとめたものです。
それぞれの著者とは親しくお付き合いさせてもらっていますが、そのお人柄と誠実な仕事ぶりから生まれた、信頼できる実践的な経営書です。

ポストコロナ時代の経営を考えるための示唆が得られるだけではなく、仕事とは何か、経営とは何か、そして働くとは何かを問い直す視座も得られると思います。

まずは、企業を現場から変えていこうという活動に長年取り組まれている柿内幸夫さんの新著です。
『カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす』(柿内幸夫 サニー・プラス 1500円)

Kaizen

柿内さんの著作は以前にも紹介させてもらいましたが、今回は柿内さんが実際に取り組んだ事例をふんだんに紹介しながら、これまでの実践知を改めて、体系的にまとめています。
「カイゼン」活動と言えば、モノづくり現場でのコスト削減や生産性の向上というイメージが強いと思いますが、柿内さんの目指す「カイゼン」は、企業にイノベーションを起こす活動です。ですから本書の書名も、『カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす』とされています。

柿内さんは、こう書いています。

カイゼンという日本発の技術は、お金がかからないシンプルな技術であり、正しく運用すると生産性や品質はもちろんのこと、新商品や新マーケットをも生み出してしまうすごい不思議な技術なのです。そしてこれは日本にしかできない特別な技術です。ですから正しいカイゼンができていない会社が多い今の日本の中小製造業の状況は、とてももったいないと思っています。
私はカイゼン指導が専門のコンサルタントです。そして私の指導先ではそのすごいことが普通に起きています。

本書でも紹介されていますが、まさに「すごいこと」を、柿内さんはいろんな会社で引き起こしています。
しかも、現場のカイゼンにはとどまりません。会社そのものが大きく変わるばかりでなく、異分野のヒット商品が生まれたり、新しいマーケットが発掘されたりすることもあるそうです。

柿内さんは全組織協働型の経営改革活動と言っていますが、その原動力は会社を支えている全員の力ですので、大きな資金投入など不要です。
魔法のような話ですが、その取り組み方法はきわめて簡単なのです。
ポイントは、社長など経営トップと現場で働く人々が同じ目線に立って、一体となって取り組むことですが、それをどうやって進めるか、そして経営とは何か(経営者の役割とは何か)が、本書には具体的に書かれています。

とても読みやすい本ですので、会社の経営に関わっている方にはお勧めです。
会社だけではなく、NPOや行政の方にもおすすめです。

つづいて、トヨタ出身の北川尚人さんの新著です。
『トヨタチーフエンジニアの仕事』(北川尚人 講談社α新書 880円)
711dczwteyl_ac_uy218_

トヨタの経営と言えば、原価低減や品質管理に優れたトヨタ生産方式がすぐに頭に浮かびますが、もう一つの「トヨタの強さ」は次々とヒット商品を生み出すトヨタ製品開発方式であり、その中心的役割を果たすチーフエンジニア(CE)制度です。

長年トヨタで、チーフエンジニアとして、新車を開発してきた北川尚人さんは、これからの成熟した経済社会にあっては、この製品開発システムこそが企業の活力の根源だろうと考えています。
「現在、世界を席巻する巨大IT企業GAFAはトヨタのCE制度を徹底的にベンチマークし、プロダクトマネジャー制度として導入し、大きな成果に繋げていることは意外と知られていない。プロダクトマネジャー制度の源流、本家はじつはトヨタのCE制度だ」と北川さんは言います。
つまり、モノづくり企業にとどまらず、トヨタのCE制度にはこれからの企業経営の活力の源泉のヒントがあるというわけです。

北川さんは、トヨタで10年間、チーフエンジニアとして数多くの新車の開発に取り組んできました。そうした自らの実践を通して蓄積してきた体験知を、わかりやすくまとめたのが本書です。
本書の中心は、北川さんの体験から生まれたCE17条(言い換えれば、ヒット商品開発のポイント)の紹介です。その第1条は、「車の企画開発は情熱だ、CEは寝ても覚めても独創商品の実現を思い続けよ」です。これだけ読むと、北川さんはただの猛烈社員のように思うかもしれませんが、そうではありません。それに続く17条を読んでもらうと、北川さんの「働くことの哲学」あるいは「生きる哲学」がわかってもらえるでしょう。

「一人でも多くの人を幸せにする乗り物を開発したい」というのが北川さんの夢だったそうですが、それは言いかえれば、「自動車メーカーの人間として何とかできないのか」と考えつづけることでした。そのために北川さんは、仕事のかたわら、まちづくりに関わったり、老年学を学んだり、障害者施設を訪問したりしていました。会社の中にいるだけでは、新しい製品は見つかりません。
本書には、そうした北川さんの夢への取り組みが具体的に紹介されています。

時代は大きく変わり、「HOW」から「WHAT」へと社会が求めるものも変わってきている。WHATを生み出し続けられる価値創造の仕組みこそが、これからの企業の活力につながっていく、と北川さんは言います。
トヨタが創り上げてきたCEのシステムは、これからの時代、メーカーだけではなくサービス分野を含むさまざまな企業にとって役に立つだろうと考えた北川さんが、自らの実践知を惜しげなく公開した本書には、力を失ってきている日本の企業を活性化するヒントがたくさんあるように思います。

製品開発のためのテキストとしても参考になるでしょうが、むしろこれからの働き方を考えるような読み方も面白いのではないかと思います。

機会があれば、おふたりにも湯島でサロンをやってもらいたいと思っています。

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧